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ビジネス
「命の値段」の不都合な真実

人が亡くなったときの「賠償金」に影響する死亡慰謝料と逸失利益 「主婦や高齢者の死亡慰謝料は低くなりやすい」「就労してない人の逸失利益は賃金センサスを元に算出」

交通事故などの「賠償金」はどう決まるのか(写真:イメージマート)

交通事故などの「賠償金」はどう決まるのか(写真:イメージマート)

「あなたの命はいくらですか?」──そう尋ねられたら、なんと答えるだろうか。とっさに頭に浮かぶのは「命はお金にかえられない」という答えかもしれない。ところが現実世界では、命はお金に換算されてしまう。しかもその値段は性別や職業、年齢によって“差”がある。私たちはこの不都合な真実とどう向き合うべきだろうか。【前後編の前編】

小学生女児の「命の値段」が問われた裁判

「娘の11年の努力と“将来”を否定しないで……」

 裁判を前に、娘を亡くした父はそう語った。

 2018年2月、大阪府大阪市で聴覚支援学校から帰宅中の井出安優香(あゆか)さん(当時11才)が、歩道に突っ込んできたショベルカーにはねられて死亡した。

 遺族が起こした裁判では、将来得られるはずだった収入にあたる「逸失利益」をどう算定するかが争われた。

 当初、被告の運転手側は「聴覚障害者は充分な情報保障や周囲の理解が得られず、就職することも仕事を続けることも困難」などとして「逸失利益は一般女性の40%になる」と主張した。

 2023年2月の1審判決は逸失利益について平均賃金の85%と算定。遺族側は健常者と同じ基準での算定を求めて控訴した。それを受け、2025年1月の2審判決は健常者同様、全労働者の平均賃金から減額せずに算定すべきと判断。被告側が上告しなかったため判決が確定した。

 この裁判では小学生女児の「命の値段」が問われた。遺族弁護団によると、障害のある子供の逸失利益について、健常者と同じ基準での算定を認めた司法判断はこれまでなかったという。

 どんなにきれいごとで取り繕っても「命の値段」は厳然と存在する。プライスレスなはずの命の価格はどう決まってしまうのか──。

次のページ:主婦や高齢者の死亡慰謝料は低くなりやすい現実

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