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ビジネス

中国系業者が明かした“IT導入補助金”不正受給の手口 ITツールの価格を高く偽って報告、「申請成功率は96%。1000社以上サポートした」

 A社の説明によると、実際にA社が提供するITツールは220万円相当のレジシステムであるという。しかし、A社は説明の中で「システムはダウンロードしてご利用いただけますが、ダウンロードしてもしなくても大丈夫です」と話していることから、形式的にITツールの提供を行なっている可能性が高い。

 パソコンなどのハードウェアもIT導入補助金の対象となる中で、ダウンロードによるサービス提供を行なうのは、こうした実態を分かりにくくする狙いもあるのだろう。A社は不正受給を斡旋するため、ITツールの価格を570万円と高く偽って事務局に報告していることになる。

 その後、A社は申請者に現金で350万円をキックバックすることで通帳にその記録は残らず、不正が発覚しにくくなる。A社には220万円が入り、申請者はタダでITツールを入手できるだけでなく、130万円の“儲け”まで手に入れることが可能になる。補助金350万円を山分けしている構図になる。これまでの実績について聞いたところ、次のように答えている。

「弊社は3年前にベンダー登録し、業務を行なってきた。申請成功率は96%で、これまで1000社以上の企業の申請サポートを行なっています」

 A社が申請1件あたり220万円を得て、のべ1000社の申請を請け負ってきたという話が事実であれば、20億円以上を不正に受給したことになる。A社にこれまでに得た利益について尋ねると、「ソフトウェアの開発費や人件費もあるので、すべてが利益となる訳ではありません」と答えた。リスクはないかと質問するとひどく楽観的な回答があった。

「制度で定められた申請方法に従って申請しているので問題ありません。もし不安でしたら補助金を受け取った後、廃業してしまえば大丈夫です」

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【プロフィール】
廣瀬大介(ひろせ・だいすけ)/1986年生まれ、東京都出身。フリーライター。明治大学を卒業後、中国の重慶大学に留学。メディア論を学び2012年帰国。フリーランスとして週刊誌やウェブメディアで中国の社会問題や在日中国人の実態などについて情報を発信している。

(第3回に続く)

※週刊ポスト2025年7月11日号

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