ゆうパック事業はグループの「お荷物」に
政府はなぜ、日本の物流網を一変させるかもしれない処分に踏み切ったのだろうか。物流ジャーナリストの刈屋大輔氏は「省庁間の密約があった可能性がある」と指摘する。
「財務省出身者が主要ポストを占める日本郵便に国交省があれほど重い処分を下すのは極めて異例です。財務省と十分に調整したうえでの処分と考えるべきでしょう」
そして、財務省を中心とした政府の真の目的は、「ズバリ、ゆうパックの廃止ではないか」と刈屋氏は指摘する。
「日本郵政グループが展開する3事業のうち、郵便・物流事業だけが赤字続きでグループの足を引っ張っています。このうち手紙やハガキなどの郵便業はユニバーサルサービスとして維持する使命がありますが、民間企業と競合する物流業は継続すべき大義がありません。日本郵政の大株主である財務省及び、財務省から天下りしている幹部には、物流業から撤退してグループ全体の赤字幅を減らしたいとの意向があると考えられる。今回の処分は、その布石ではないか」
日本郵政の2025年3月期の決算は、金利上昇を追い風にゆうちょ銀行の連結純利益が上場来の最高益を更新し、かんぽ生命保険も前期比42%増益。対する日本郵便は8年ぶりの最終赤字に陥り、グループの「お荷物」ぶりが明らかになった。
全国に約1万8000人超いる郵便局長が所属する「全国郵便局長会」は自民党の巨大な集票マシンとして知られ、既得権益を揺るがす改革を許さないといわれてきた。だが、ゆうパック廃止には局長会も異を唱えないはずだと刈屋氏は見る。
「局長たちが願うのは、郵便局が生き残ること。自転車やバイクで配れるハガキと比べて、配達の負担も大きいゆうパックはむしろやめてもらいたいというのが本音ではないでしょうか」
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※週刊ポスト2025年7月18・25日号