7月以降も中国ネット上で風水話が蒸し返されかねない
前出の統計に話を戻すと、韓国に次ぎ5月の訪日外客数の多かった中国は44.8%増と大きく伸びている。文化大革命の時期にほとんどの風水師が中国を離れ、海外の華僑社会に移ってしまった。また、中国共産党は社会全体に悪影響を与えるような主観的、非科学的な予想について、厳しくその発表を禁じていることもあり、風水文化は相対的に廃れている。その点が香港との違いとなって表れているとみられる。
ただ、7月以降については、中国においても、訪日外客数に大きな変化があるかもしれない。先週から今週にかけて、中国のマスコミは“7月5日の予言”、“予言による日本国内の様子”、“予言に対する気象庁の見解”、“予言による経済損失は5600億円”、“7月に大地震が発生するといった三木大雲住職による別の予言”など、多角的に“予言話”を報道している。また、個人ベースのSNS(微信など)では、“予言話”の詳細に飽き足らず、日本に住む中国人による7月5日の大阪の某スーパーマーケットの状況であるとか、富士山噴火があるのではないかといった噂を検証するようなライブ配信などもみられた。さらに、トカラ列島で起きている群発地震、霧島連山・新燃岳の噴火などについて、日本の報道、個人のSNSなどから切り取ったと思われるニュース、動画がネット上に幾つもアップされている。
中国国内でこれだけ日本の地震、津波、噴火などに関する話題が出てしまえば、風水話が中国ネット上でも蒸し返されかねない。前述の通り、丙午月(7月7日~8月6日)は火勢が更に強化されることから、富士山の噴火などを心配する人もいるようだ。
証券業界において“風説の流布”は金融商品取引法で禁じられており、違反者には罰金、懲役が科せられる。“予言”においても、虚偽の情報を流すことで利益を得ようとする行為は、罰せられるべきだと思う。ただ、「科学では7月に大規模な地震があるかどうかはわからない」としか答えられず、これでは予定通りに旅行すべきかそれとも中止すべきか、意思決定をしなければならない人にとって役に立たない。
実社会では「世の中の事象には科学で説明できないことがたくさんあり、霊能力や、風水などが科学を超える存在であるかもしれない」などと考える人も少なくない。「悪質なデマを垂れ流すことは犯罪だ」とか、「デマを信じないでください」と叫ぶだけでは人々の消費行動を変えるのは難しいだろう。
夏のインバウンド消費は低調となることを覚悟しておいた方が良さそうだ。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。