「予言の日」は過ぎたが(たつき諒『私が見た未来 完全版』の表紙)
日本政府観光局は6月18日、5月の訪日外客数(推計値)を発表した。全体では対前年同月比で21.5%増と引き続き高い伸び率であったが、国別でみると4番目に多い香港が11.2%減、6番目に多いシンガポールが1.0%増と突出して低い結果となった。1~5月の累計を順に示すと、7.7%増、14.7%増なので、5月に入って香港、シンガポールからの観光客の伸び率は大幅に悪化している。
香港において“異常値”を示すことになった最大の要因は「日本で地震が発生するという情報がSNSなどで拡散されたことだ」と日本政府観光局は分析している。大元は2021年に出版された、たつき諒さんの漫画『私が見た未来 完全版』(1998年の改訂版)で、今年に入って“2025年7月5日に大災害が起こる”という情報が日本のネット空間で拡散し始め、それが香港をはじめ海外にも広がり、影響を受けたとする分析であろう。
一方、その他の要因も考えられる。香港、シンガポール、台湾、マレーシアといった華僑たちの間では風水を信じる人が多い。DeepSeekに「四柱推命、八字に基づいた2025年夏頃の日本全体の運勢」を尋ねてみると、興味深い“予言”との一致もみられるのだという。
2025年は乙巳年(木火の年)となり、夏の壬午月(6月5日~7月6日)は「天干壬水(陽水)+地支午火(陽火)」で構成され、火勢が極めて旺盛である。また水火相剋、水火相沖(水、火の均衡崩壊)となるが、これは地震・洪水・火山活動の活発化を示唆する。ちなみに、「火剋金のため、株式市場は乱高下や急落リスクがあり、貴金属投資は慎重にするように」とのお告げもあった。
丙午月(7月7日~8月6日)は火勢が更に強化され、災害リスクは継続される。丁未月(8月7日~9月6日)は火土相生となるが、「赤馬紅羊の年」(2026年、2027年の天干地支、火災・戦乱の象意)の予兆に注意が必要である──という。
香港の著名風水師も日本への旅行に警鐘
一方、日本独自の要因として「地震多発国のイメージが強い」ことが挙げられる。2011年3月に発生したマグニチュード9.0の東日本大震災は1900年以降に発生した地震では、1960年5月のチリ(マグニチュード9.5)、1964年3月のアラスカ湾(9.2)、2004年12月のスマトラ島北部(9.1)に次ぐ規模(気象庁、米国地質調査所資料)であり、当時の津波被害のすさまじい状況はアジア各国の人々を震撼させた。
南海トラフ地震のリスクについて今年1月、今後30年の発生確率がそれまでの70~80%から80%程度に引き上げられたが、訪日を検討する多くのアジア人もこの情報を知っているようだ。風水上、地震、洪水、火山活動が活発となる時期に当たる今年の夏、世界のどこかでそれらが発生するとしたら、まず日本ではないかといった連想がすぐに働くはずだ。
実際、香港の著名風水師である蘇民峰氏などは今年4月、2025年の東北方位(日本が相当)は災難の方角にあり、旅行は控えた方が良いと占っている。5月の段階では“7月5日の予言話”はそれほど大きく広がっていなかったことを考え合わせると、ここで説明した複数の要因が重なったことで、香港からの旅行者が大きく減少したとみられる。