日本では偽造書類が発覚しにくい懸念
偽造証書の実態についてジャーナリストの周来友氏はこう話す。
「中国では2023年、大規模な卒業証書偽造組織への摘発が行なわれ、7000点の偽造書類が押収されて1億2000万円以上を売り上げていたことが報じられている。
中国人の間では中国での就職活動を有利に進めるため、“足がつきにくい”海外大学証明書の偽造ブローカーを利用することは珍しくない。また、近年は中国国内の教育競争の激化や景気低迷の影響から日本への移住希望者が増加しており、そうした一部の中国人が日本国内での就職のために偽造業者を利用していることも考えられます」
東京大学に卒業証書偽造の実態を把握しているか問うと「本件について把握しておりません。事実であれば遺憾であり、本学として適切に対応する所存でございます」(コミュニケーション戦略課)と回答した。
欧米では学歴詐称や経歴詐称を防止するため、経歴照会や身辺調査を専門に行なう業者が多数存在するが、日本では個人情報保護法の観点やコスト面から欧米レベルのチェックは難しく、偽造書類が使用されても、発覚しにくい懸念がある。
現在、日本企業で働く外国人は230万人を超え過去最高を記録している。外国人材の受け入れが加速する日本だが、こうした実態への対策も必要となってくるだろう。
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【プロフィール】
廣瀬大介(ひろせ・だいすけ)/1986年生まれ、東京都出身。フリーライター。明治大学を卒業後、中国の重慶大学に留学。メディア論を学び2012年帰国。中国の社会問題や在日中国人の実態などについて情報を発信。本誌(25年5月23日号)で中国人「カンニング業者」の実態をスクープした。
※週刊ポスト2025年8月15・22日号