上から見た通勤電車の車内。グレー部分は座席。立席定員は、緑部分の床面積から算出する。筆者作図
それでは、立席定員はどのようにして決めるのでしょうか? つり革の数や、手すりの数が気になる人もいるでしょうが、これらは立席定員とは関係ありません。
立席定員は、座席付近(座席と座る人の脚部分)を除く床面積で決まります。日本産業規格(JIS)では、座席と、その前の250ミリメートルの床面積を除いた部分のうち、有効幅550ミリメートル以上で有効高さが1900ミリメートル以上確保できる部分の床面積を、1人あたりの床面積(0.14平方メートル)で割った値を立席定員と定義しています[2]。
日本の通勤電車における1両あたりの定員は、車種によって異なります。たとえばJR山手線の通勤電車(E235系0番台)では、先頭車の定員が142人、中間車の定員が160人となっています[3]。
今回紹介した定員は、混雑率の基準にもなっています。混雑率は、車内の混雑状況を示す値で、乗車人数÷定員×100(%)で表します。つまり、定員通りの人数が乗っていたら混雑率は100%です。
日本の鉄道では、高度経済成長期に混雑率が200%を超える区間が存在しました。大都市圏で人口が急増したのに対して、鉄道の整備が追いつかなかったからです。
いっぽう近年は、当時よりも混雑率が低下しています。これは、鉄道ネットワークの充実や輸送力増強が実現したことと大きく関係しています。国土交通省の資料[4]によると、2024年度に国内の鉄道(軌道ふくむ)でもっとも混雑率が高かった区間は、日暮里・舎人ライナの赤土小学校前→西日暮里で、177%でした。
(参考資料)
[1] 一般財団法人 日本民営鉄道協会「鉄道用語事典」,定員
https://www.mintetsu.or.jp/knowledge/term/16419.html
[2] JIS E 7103:鉄道車両-旅客車-車体設計通則,日本規格協会発行
[3] JR東日本E235系一般形直流電車(量産先行車),一般社団法人 日本鉄道車輌工業
「車両技術251号」
[4] 最混雑区間における混雑率(2024),国土交通省
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001902901.pdf
【プロフィール】
川辺謙一(かわべ・けんいち)/交通技術ライター。1970年生まれ。東北大学工学部卒、東北大学大学院工学研究科修了。化学メーカーの工場・研究所勤務をへて独立。技術系出身の経歴と、絵や図を描く技能を生かし、高度化した技術を一般向けにわかりやすく翻訳・解説。著書多数。「川辺謙一ウェブサイト」も随時更新。