電車のパンタグラフ。架線と接触し、車両の機器に電気を供給する役割を果たしている。筆者撮影
鉄道は、多くの人にとって交通の手段としてだけでなく、趣味や娯楽の対象としても親しまれており、ときに人の知的好奇心を刺激してくれる。交通技術ライターの川辺謙一氏による連載「鉄道の科学」。第32回は「パンタグラフ」について。
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今回のテーマは、「パンタグラフ」です。電車の屋根上にある部品で、電車のシンボルとも言える存在です。そう、菱形や「く」の字形で、空中に張られた電線(架線)にふれている部品です。電車に乗るときに、見たことがある方は多いでしょう。
今回は、パンタグラフの役割や構造、形状の種類に迫ってみましょう。
役割と構造
パンタグラフは、外部から電気をとりこむ装置(集電装置)の一種です。本連載の第17回記事《パンタグラフのない地下鉄の電車はどうやって電気を取り込んでいるのか? 線路に“3本目のレール”がある「第三軌条方式」》では、線路に敷かれた3本目のレール(第三軌条)と接触する「集電靴(しゅうでんか)」と呼ばれる集電装置を紹介しました。ただし、日本の電車では、集電装置としてパンタグラフを採用した例が多いです。
パンタグラフは、線路(軌道)の上に張られた架線と接触し、車両の機器に電気を供給する役割をしています。このため、車体の屋根上に固定されています(電車の場合は、編成の一部車両)。
パンタグラフは、おもに台枠(だいわく)・枠組(わくぐみ)・舟体(しゅうたい)と呼ばれる部品で構成されています。台枠は車両の屋根上に固定する部品です。枠組は台枠の上にあり、舟体を上に押し上げる部品です。舟体は枠組の上にある部品です。舟体の上部には、すり板が固定されており、これが架線と接触します。台枠は、舟体を垂直方向に押し上げ、架線の高さに合わせて動きます。