東北・北海道新幹線を走るE5系グランクラスの客室。鉄道車両には、種類に応じた定員がある。この客室の場合は、座席の数(座席定員)が定員だ。筆者撮影
鉄道は、多くの人にとって交通の手段としてだけでなく、趣味や娯楽の対象としても親しまれており、ときに人の知的好奇心を刺激してくれる。交通技術ライターの川辺謙一氏による連載「鉄道の科学」。第34回は「鉄道車両の定員」について。
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今回のテーマは、「鉄道車両の定員」です。ここでは、鉄道車両の種類ごとに、1両あたりの定員を数える方法を紹介します。
定員とは何か?
人を運ぶ鉄道車両には、定員と呼ばれる数値が存在します。各車両の定員は、基本的に車体の妻面(連結部分の面)に記されています。
それでは、定員とは何でしょうか? 一般社団法人 日本民営鉄道協会がネット上で公開している「鉄道用語事典」[1]には、〈鉄道車両の客室部分の座席定員と立席定員を加えた数のことを「定員」といいます。座席指定車の場合は座席の数、寝台車では寝台の数が定員です〉と記されています。また、鉄道では通常の運行に支障のない定員数を示した「サービス定員」を定員とするとも記されています。
つくばエクスプレスの電車(TX-2000系)の妻面(写真上)。赤い部分に「定員147人」と記されている。筆者撮影
種類によって異なる定員
この記述の通り、定員は鉄道車両の種類によって異なります。わかりやすいのは、先述した座席指定車です。新幹線の列車や、座席指定の特急列車の場合は、車内(客室)の座席定員(座席の数)が定員になります。乗客全員が座席に座ることを前提としているからです。
いっぽう、私たちにとって身近な通勤電車はどうでしょうか? 座席指定車とくらべると、明らかに座席が少なく、立つ人が多いですよね。
通勤電車は、輸送力が求められる鉄道車両なので、1両あたりの定員を増やすように設計されています。座席が少ないのは、立つ人の数(立席定員)を増やすための工夫です。このため、通勤電車の定員は、座席定員と立席定員の和となっています。
東京メトロ10000系の車内。座席指定車よりも座席数を減らして、人が立つ床面積を増やしている。筆者撮影