日本屈指の高級住宅街で何が(披露山庭園住宅団地管理組合ホームページより)
相模湾を一望し、晴れた日には富士山や江ノ島が見渡せる神奈川県・逗子の超高級住宅地「披露山庭園住宅」。ユーミン(松任谷由美)や小田和正、楽天グループ・三木谷浩史社長ら財界人が別荘を構え、“日本のビバリーヒルズ”とも呼ばれるこの地区が今、ある騒動に揺れている。この夏、街の一画に宇宙船のような外観の巨大邸宅が出現。近隣のセレブ住民たちから景観に関する苦情が上がり、施主と大揉めに揉めているのだ。
巨大邸宅の主は、飲食店経営や空間プロデュースを行なうトランジットホールディングスの社長・中村貞裕氏(54)だ。1971年生まれの54歳。慶大法学部を卒業後、伊勢丹(現三越伊勢丹ホールディングス)に入社。2001年、30歳で現在の会社のルーツとなるトランジットジェネラルオフィスを立ち上げた。その中村氏の私邸が近隣住民の目に留まり始めたのは、今年の春先だった。
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居住者の管理組合が独自に定めた「建築協定」
中村邸の設計は有名建築家が担当したこだわりのデザインだという。そんな邸宅に対して近隣の住民たちは何をそんなに怒っているのか。それを知るには披露山庭園住宅の特殊な“作法”に目を向けなくてはならない。この地区では「披露山庭園住宅団地管理組合」という居住者の管理組合があり、その組合が作った独自に定めた「建築協定」が存在する。
この協定は1972年に施行され、これまでに7回改訂されてきた。かつては「1区画300坪(約1000平方メートル)」以上と定められていた。後期に開発された区画は500平方メートル以上に緩和されているが、1区画を複数の世帯で区分けして使うことは禁じられ、分割して売却することもできない。電線、電話線はすべて地下に埋設されているため歩道に電柱はなく、遮るものがないすっきりとした空を見上げることができる。
また「建物の高さは8メートル以内」「擁壁の高さは1メートル以内」などと厳しく制限されている。新築・増改築する場合、施主、設計者、建築コンサルタント(1人)、建築協定運営委員会委員(5人)の四者が参加して、施主設計者による計画の説明と、質疑応答が行なわれるほか、住民が出席する住民説明会も開催される。設計図や模型を見せて組合員の同意を得るのが“慣わし”だという。住民の1人が言う。
「中村さんもこうした手続きを経たが、最初は『(建てるのは)木造平屋ですからご迷惑はおかけしません』と言っていた。しかし、工事が始まると、屋根がどんどん高くなっていき、ある日、巨大な壁が出現したんです」