世界的な業界再編で思い描いたライフプランはあっさり崩壊
会社員である以上は運命を会社に委ねることになる。東京大学を卒業し、一流企業で働いていたGさん(40代/男性)は、現在片道2時間の通勤生活を送っている。
「私がもともと勤めていたのは食料品メーカーの製薬部門です。文系出身の同期は転勤生活ですが、私は研究所勤務なので転勤はなく、30代初めに神奈川県K市の研究所の近所に家を買いました。しかし8年ほど前に医薬品部門が分社化され、所属部署は消滅。幸いなことに好条件でヘッドハンティングがあり、その話に乗ることにしました。
唯一の問題は、新たな勤め先が茨城県つくば市だということです。もちろん引っ越しも考えましたが、そうすると私の通勤時間が短くなる代わりに子供が遠距離通学をすることになるので却下。単身赴任は無理そうなので、2時間かけて神奈川県から茨城県まで通っています」(Gさん)
Gさんは、「こんなことが起きるとは全く想像していませんでした」という。
「製薬部門の売上はずっと伸びていましたし、研究所も15年ほど前に建て直されたばかり。私も着実に成果を残していたので、定年まで間違いなく同じ場所で働けると思っていました。ただ、世界的な業界再編があるということは完全に想定外でしたね。その波に飲み込まれ、思い描いたライフプランはあっさり崩壊しました」(同)
2回の吸収合併で通勤時間が20分から90分に
神奈川県川崎市在住のFさん(40代/女性)は大学卒業時、「転勤がない」ことを確認してコンピューター系企業に就職したが、その狙いは大きく外れた。
「私は当時テニスにのめり込んでおり、就職活動で最優先したのは、競技が続けられて転勤が無いこと。幸いにして中堅ながら希望の業界で報酬も良く、趣味に理解がある完璧な企業が見つかりました。でも就職して数年後、同業他社に吸収合併され、オフィスが移転。通勤時間は20分から50分になりました。
さらに3年後、会社は再び吸収合併され、オフィスはもっと遠くなって、通勤時間は90分になりました。転職や引っ越しも考えましたが、2度にわたる吸収合併で、今や世界的大企業です。キャリアを捨てる勇気はなく、やむなく遠距離通勤をしています」
様々なトラップが潜んでいるのが会社員人生。会社員である以上、入社時に思い描いた生活が続くことはありえないのかもしれない。後編記事では、想定外の勤務地変更に伴い、通勤時間以外にもある苦労の数々を紹介する。
■後編記事を読む:突然の本社移転で一変した会社員生活 都心の創業地からベイエリアに、海外に本社機能移転で自社ビル売却、周辺環境激変で飲み会も消滅…通勤時間だけに留まらぬ苦労