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「鬼滅」も「国宝」も…日本映画界で“一人勝ち”の東宝 ルーツは阪急創業者が作った「東京宝塚劇場」、映画ライターが見てきた“組織としての強さ”の秘密

鬼滅の特大ヒットで映画館も大賑わい

鬼滅の特大ヒットで映画館も大賑わい

 映画『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が興行収入299億円を突破し、『国宝』も同110億円を突破。これら大ヒット映画の配給を担っているのが株式会社東宝(以下、東宝)だ。

 その歴史は古く、設立は第二次大戦前の1932年にまで遡る。邦画界の“黄金期”である1950年代には『七人の侍』(1954年)といった黒澤明作品や『ゴジラ』(1954年)などを世に送り出し、その後も『千と千尋の神隠し』(2001年)や『君の名は。』(2016年)、『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年)など、その時代を代表する作品を配給してきた。

 ますます存在感を強める日本の最大手映画会社・東宝の歴史を、映画業界を25年以上見守ってきた映画ライター・和田隆氏の著書『映画ビジネス』より解説する。(同書より一部抜粋して再構成)【全3回中の第1回】

 * * *
 東宝は、2024年12月23日に2025年の配給作品ラインナップ発表会を開催。11月末時点の興収が864億円を記録し、2016年の854億円を上回って歴代最高興収を達成。最終的に2024年の年間興収は913億円を記録し、なんと500億円超えは21年連続、600億円超えは13年連続です。興収10億円以上の作品は19本あり、50億円超えの6本で合計527億円と、映画業界全体の約25%を占めました。

 この東宝の強さの要因はどこにあるか、そのルーツを簡単に振り返ってみましょう。元々は、阪神急行電鉄(現在の阪急電鉄)の創業者、小林一三氏が、演劇、映画の興行を目的として株式会社東京宝塚劇場を1932年に設立。1934年に東京宝塚劇場を開場すると、有楽座、日本劇場、帝国劇場を所有し、日比谷一帯を傘下に納めました。

 1943年8月の東宝映画合併を経て、映画の製作・配給・興行、演劇興行の一貫経営に乗り出し、同年12月に社名を東宝株式会社と改めました。前述の通り、東宝の年間興収は2000年以降好調をキープし続けており、2024年の東宝のシェアは国内年間興収の44%を占めました。 そして、経営基盤を支えているもうひとつの大きな柱が不動産事業です。その営業収入(691億4200万円)の構成比は2024年2月期で24.4%を占めています。作品の成績によって売上が上下する可能性の高い映画事業に対し、全国主要都市の好立地に不動産、シネコンなどを保有、運営管理することで、映画・演劇・アニメなどのコンテンツと連携しながらエンタテインメント事業を支えているのです。

 2022年に創立90周年を迎え、100周年となる10年後の未来を見据えた「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」を発表し、祖業である映画、演劇、不動産に加えて、あらためてアニメを第4の柱に、グローバル市場に向けてビジネスを広げ、多角的にシナジー効果を高めていくとしています。

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