WBCで日本のキー局が抱えるジレンマとは(写真/AFP=時事)
9回表、大谷翔平が米国代表の主砲・トラウトから空振り三振を奪い、喜びを爆発──そんな感動的なシーンは地上波テレビで観られなくなる。2026年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は、米動画配信大手ネットフリックス(Netflix)が全47試合の放映権を獲得、独占放送すると発表された。視聴には月額890~2290円の有料会員登録が必要だ。
WBC日本ラウンドの運営・興行を担うのは読売新聞社だが、「WBCインク(WBCI=米MLBと同選手会からなる大会組織)が当社を通さず直接ネットフリックスに日本国内での放送・配信権を付与した」と声明を発表し、“蚊帳の外”であったことが明らかに。
前回大会を放送したTBSは「国民的関心の高いスポーツイベントを無料の地上波放送で中継することの意義や視聴者の期待は非常に大きいと考えている」(広報室)、テレビ朝日も「第1回大会から地上波放送に携わってきたが、今大会は地上波での独占放送権の獲得に至らなかった」(広報部)と悔しさを滲ませた。
明らかになったのは圧倒的な資金力の差だ。東大卒で元ロッテ投手の小林至・桜美林大教授(スポーツ経営学)が語る。
「前回大会の放映権料は約30億円とされるなか、今回は150億~200億円と見られています。日本のテレビ局にそんな体力はありません。世界の配信大手と規模の差が拡大しており、民放全局とNHKの放送収入が合わせて約2.4兆円なのに対し、ネトフリは1社で6兆円です」