推薦入試を目指す生徒たちの選択肢とは?
推薦入試が大学入試合格者の半分近くを占めるようになった。その中で目立つのは指定校推薦だ。指定校推薦を目指す生徒たちは高校進学の段階で「ある傾向」があるという。それはなにか。『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』が話題のノンフィクションライター・杉浦由美子氏がレポートする「“推薦入試”時代の真実」。【全3回の第3回。第1回から読む】
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前回記事では、大学で「指定校推薦組の退学者が増えている」という事実を紹介した。これは衝撃的ではないだろうか。私はかなり驚いた。
指定校推薦組は、高校の優等生のはずだ。なぜその指定校推薦の入学者が退学してしまうのか。さまざまな理由があろう。
希望していない学部なのに、指定校の枠があるから進学をしたがどうにも授業に興味を持てないため退学してしまうパターン。ようはモチベーションが足りなかったわけだ。これは昔からあったように思う。ある50代の女性は話す。
「私が通っていた女子校から、ある女子大の被服科に指定校推薦で同級生が進学しました。彼女は知名度のある大学ならどこでもいいということで選んだんです。でも、被服科って専門的なことを勉強するから実習も厳しいし、その子は被服に興味が持てないからって退学するって大騒ぎしていました。母校の先生が説き伏せて、どうにか卒業してましたけどね」
このように、とにかく大学に進学したいという理由で入学したが、入ってみたら「合わない」と気づいたパターンだ。
もう1つは、学力が足りず、授業についていけないパターンだ。理系学部に多い。理系は学力がないと単位がとれないので、真面目に授業に出ているだけでは単位がとれないこともある。ある塾の関係者はいう。
「高校によっては、希望した生徒がいたら選考をせず、推薦するケースもあるからです」
少子化なのに、指定校推薦の枠は拡がっている。そうなると、1つの枠への希望者が1人しかいないこともある。その場合、無条件に推薦してしまうと、学力が足りない学生でも進学できてしまうのだ。