東大の学部卒・院卒とも今春の就職先はコンサル企業が多かった(時事通信フォト)
就職・転職市場におけるコンサルティング業界の人気が高まっている。経営戦略の策定やDX支援などあらゆる業界でコンサル需要が高いためとされるものの、コンサルタントには「限られたエリートの仕事」といったイメージも根強い。しかし、コンサルに特化した転職エージェントは「幅広い領域に採用が広がっている」と指摘する。コンサル業界の最新採用事情について、フリーライターの清水典之氏がレポートする。
* * *
東京大学新聞の記事によると、2025年春に東大を卒業した学部生の就職先ランキング(民間企業)を席巻したのは国内外のコンサルティング会社だった。
2位:アクセンチュア(18人)、4位:EYストラテジー・アンド・コンサルティング、マッキンゼー・アンド・カンパニー(各17人)、5位:野村総合研究所(15人)、9位:PwCコンサルティング、ボストン・コンサルティング・グループ(各12人)と、上位10社中コンサルティング会社が6社も入っている(2025年8月2日付「【25卒東大生就職状況】学部生で三菱商事が首位 院生トップは4年連続アクセンチュア」)。
「誰かの役に立ちたい」
なぜこれほどコンサルタントという職業が人気になっているのか。『「コンサルティングファームに入社したい」と思ったら読む本』(ダイヤモンド社)の著者で、コンサルティング業界への人材紹介を手掛けるムービン・ストラテジック・キャリアのシニア・パートナー、久留須親氏はこう答える。
「高収入であることは理由の第一に挙げられますが、それだけではありません。誰かの役に立ちたいというマインドを持つ若い人にとっては、コンサルタントは、クライアントの抱える問題を一緒に解決できるやりがいのある仕事です。20代、30代の頃から、大企業のトップや目上のマネジメント層と対峙できる機会があり、その会社の事業にインパクトを与えることができるのです。
また、20代、30代でコンサルティングファームでの経験があると、その後転職する際にも引く手あまたになり、将来のキャリアが広がるのも魅力に映るようです」(久留須氏・以下同)
一般に大企業に就職した場合、東大卒であっても、社長と対面で議論する機会はほとんどなく、ましてや「君の提案は素晴らしいから採用しよう」などということはまずないだろう。
ただ、いくら東大・京大など超難関大学卒のエリートに人気だとしても、そうした難関大学卒でなければコンサルタントになれないのなら、世間のほとんどの人々にとっては無縁の話。今起きているような“コンサル転職ブーム”は起きていないはずである。
「リクルートの調査によると、日本市場におけるコンサルティング業界の2022年度の転職者数は、2013年度に比べ3.54倍に増えました。誰でもコンサルタントに転職できるとは言いませんが、コンサルティングのニーズが高まっているので、それに合せてファームも拡大していく必要があり、採用を増やしているのです。世の中で信じられているよりは、幅広い領域に採用が広がっています」