コンサル転職の“常識”が変わった(写真:イメージマート)
企業のDXや脱炭素対応、事業承継や再編など、近年のコンサルティング市場の規模拡大により、「コンサル転職ができるのは20代まで」という従来の常識が変わりつつある。フリーライターの清水典之氏が、コンサル転職エージェント歴18年の識者に最新事情を取材。コンサル企業が中途採用で求める人材像についてレポートする。
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「『コンサルティングファームに入社するには、20代でないと難しいですよね?』と聞かれることがよくありますが、もはや都市伝説になりつつあります」
そう語るのは、『「コンサルティングファームに入社したい」と思ったら読む本』(ダイヤモンド社)の著者で、コンサルティング業界への人材紹介を手掛けるムービン・ストラテジック・キャリアのシニア・パートナー、久留須親氏。創業29年の同社はこれまで約4000人の人材をコンサルティング業界に送り込んできた。
コンサル業界に転職するには、歳が若いほうがいいのは事実だが、若ければいいわけではない、と久留須氏は言う。
「新卒採用をしているファームの場合、新卒の応募が殺到するので、若手層は足りていることが多い。だから、社会人経験が1〜3年くらいの20代前半の人は、むしろ採用されにくいのです。ファーム側がもっとも採用したいのは、20代後半から30代前半で、社会人経験をそれなりに積んで仕事で成果を挙げ、脂がのってきた人と言えます。
では、30代半ばから後半、あるいは40代にはチャンスがないかというと、昔は確かに可能性はほぼゼロでしたが、今は状況が変わりつつあります。市場規模が拡大し、コンサルタントの需要が増加しているのと、人材育成のノウハウが貯まってきたことで、採用の幅が広がっています」
「50代でコンサル転職に成功」したケースも
年齢によって、当然、求められるものは異なる。20代の若手は“素材重視”で、インテレクチュアルスキル(知的さ、地頭の良さ)の高い人材を採用し、鍛え上げて一人前のコンサルタントに育てていくが、30代半ば以降となると、インテレクチュアルスキルに加え、本人が他業界で培ってきたスキルが評価の対象になるという。
「特定の業界や業務・ITの高い専門性を持つ人が採用に至っています。具体的には、製造業界や金融業界、エネルギー業界、プラントエンジニアリング、官公庁などで、R&Dや生産製造工程、サプライチェーン、M&A、財務管理などの仕事をしていた高いスキルを持つ人。
あるいは、IT関連で、SAP(社内管理システム)やSalesforce(顧客管理・営業支援システム)などのパッケージ、大規模システム開発のプロダクトマネージメント、AI、DXなどの最新技術などに精通している人です。こうしたスキルを持つ人は、総合系ファームだけでなく、一部の外資経営戦略系ファームでも採用に至るケースが増えています。ファーム側の需要とマッチして、50代でも採用されたケースはあります」