「非認知能力ビジネス」は金になる
では、なぜ、業者やNPOは「推薦入試が拡大するのは今までの詰め込み教育ではダメだからです。コミュニケーション能力などの非認知能力が重要なので、学力以外の部分を重視する入試を拡大します」とセールストークをしてきたのか。
それは「非認知能力ビジネス」が金になるからと見込んだからだ。
ある難関男子校は探究学習で「文献を読み込んで論文を書かせる」ということをやっている。校内には所狭しと専門的な学術書が並ぶ。
このような「文献を読み込んで論文を書く」といった探究学習や活動をさせても、業者やNPOはお金にならない。難関高校の生徒に「文献を読め」といえば、彼ら彼女らはスラスラと読んでしまうからだ。そこにビジネスチャンスはない。
一方で、お金になるのは活動実績を作らせる、つまり、「体験を作るビジネス」だ。Xで、「総合型選抜のために海外の障害者施設に泊まり込みでボランティアをする」という投稿があった。
検索すると、あるNPOがそういった内容のボランティアツアーを1週間20万円で販売していた。思うにこのNPOは真っ当な価格設定をしているのだろう。情報弱者を騙して稼ごうという方針ではないと推測できる。こういった体験を売るビジネスも真面目にやっているとそうは利益は出ない。
しかし、これを「転売」すれば話は別だ。20万円で仕入れたボランティアツアーを、50万円ぐらいで販売している新興塾や通信制高校のサポート校などがある。インフルエンサーたちに対価を払って宣伝させれば10人くらいは申し込んでくるかもしれない。そうすると、中抜きで300万円の利益になるのだ。これを通信制のサポート校などが生徒たちに販売すれば、販売数は増えるから、さらに利益は多くなろう。