推薦入試が拡大するなかで大学側の対応も変化してきている
大学入試の大半が総合型選抜など推薦入試となっている。その中で推薦入試の対策を謳った「体験を売る」ビジネスが拡大している内情を前編記事でレポートした。その一方で大学の入試方法にも変化が起きているという。その傾向はどのようなものか。『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』が話題のノンフィクションライター・杉浦由美子氏がレポートする。【前後編の後編。前編から読む】
前回記事では、「勉強が苦手な子でも活動実績を作れば総合型選抜で大学に進学できますよ」と謳って、留学やボランティアなどの活動実績を売るビジネスをする業者の動向について書いた。
この「体験を売るビジネス」は従来、東京や神奈川の私立校をターゲットにしてきたが、合格実績があがらないので、ビジネスが行き詰まっているとも聞く。都会の私立校の保護者は情報を持っているので、もう“体験”を買ってくれないようになっているのかもしれない。
そのため、今、体験を売るビジネスターゲットは通信制や地方の高校生の保護者にシフトしている。彼らはまだ情報を持っていないから「勉強が苦手でも活動実績を作れば総合型選抜で大学に行けますよ」というセールストークを真に受ける可能性があるからだ。
しかし、実際の総合型選抜は、「体験を売る」業者の意向とは真逆の方向に進んでいる。
文部科学省が推薦入試でも学科試験(英語や数学などの学科のペーパー試験)を課すことを認めた。あくまでも小論文や調査書、面接などを組み合わせる形でだが。さて、なぜ、学科試験を許可したのか。それは学力を測るのに学科試験が一番効率的だからだろう。文科省は推薦入試に対して「学力把握措置」という方針を示している。定員割れしている大学が学生を集めるために「面接だけで合格させる総合型選抜」を行っていたために、「推薦入試でもきちんと学力を把握してください」というお達しを出したわけだ。
だが、課題レポートや小論文、面接だけでは学力を測るのは手間がかかる。そこで理系の学部では、小論文という名前で数学や理科の記述式の試験をし、面接でも学科試験を課していた。
ある名門女子大の理系学部の総合型選抜を受験した学生は、放課後に同級生たちと面接の練習をして試験に備えたが、実際の面接試験の場では白い紙を渡され、そこに書かれた数学の微分積分の問題をホワイトボードで解くようにいわれた。このような方法で大学は学力を測ろうとしてきたが、今後は堂々と学科試験を課せるようになる。
