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音楽ビジネス「グローバル化」の最前線

【世界を席巻するK-POP】グローバル化を成功に導いた「機動力」、それを支える音楽出版、原盤、実演が一体となった業界構造とは

K-POPに携わる企業は機動性を活かして戦略的に動いている(Getty Images)

K-POPに携わる企業は機動性を活かして戦略的に動いている(Getty Images)

 世界を席巻するK-POP。そのグローバル化は、ファンにとどまらず企業の在り方にも広がっている。BTSが所属する事務所「HYBE」は、日本やアメリカなど4か国に進出。日本では、9人組多国籍ボーイズグループ「&TEAM」が誕生し、今年4月に出したシングル曲『Go in Blind(月狼)』は総出荷枚数100万枚を達成する人気ぶりだ。さらには、今年、インドにも拠点を設立し、K-POP流の制作システムを導入し、現地での世界最高水準のアーティストの育成を掲げている。

 そのようなK-POP業界のグローバル化を実現する「機動力」は、業界構造に隠されているという。音楽出版、原盤、実演などの諸権利が一括でアーティストの事務所に集約されており、迅速な意思決定と展開を可能にしている。一方で日本はそれらが複雑に分散しているため、関係各所に確認・許可を繰り返すという時間を要する。この“構造的な違い”こそが、K-POPの勢いを支えるエンジンとなっているという。

 こうした潮流の中で今後の日本の音楽ビジネスに求められるものとは――。ユニバーサルミュージックでデジタル本部長を務め、音楽業界の第一線で活躍する鈴木貴歩氏の著書『音楽ビジネス』より、一部を抜粋して再構成。(全3回の第1回)

K-POP躍進を支える業界構造

 世界中で人気を博すK-POP。特に2010年代からの躍進にはめざましいものがあり、同時期にデビューした東方神起・少女時代・KARAをきっかけに日本でも熱狂的なファンをいまも生み出し続けています。この章では、K-POPが世界で躍進するようになった理由について、日本との違いに触れながら、紐解いていきます。

 K-POPの躍進には、ストリーミングを始めとした音楽の進化にすばやく適応する「機動力」と、それを可能にした業界の構造があります。

 ただこの「なぜ?」を紐解くには、韓国と日本の音楽産業の構造の違いを押さえておく必要があります。簡単にいえば、韓国と比べ日本の産業構造は多層的で複雑なものになっています。音楽出版に属する楽曲の著作権(作曲・作詞)については、JASRACのような音楽著作権管理団体に管理が委託されているケースがほとんどで、もしそれらが用いられた楽曲を使用したい場合は、許諾を取る必要があります。

 またそれとは別に原盤(音源)についてはレコード会社への許諾が必要です。アーティストに歌ってもらいたい場合(実演)に際しては、アーティストが所属する事務所・マネジメント会社との交渉になります。これらを組み合わせた取り組みをしたいということであれば、すべての関係者(ステークホルダー)に許諾を取る必要があるわけです。

 一方、韓国は音楽出版、原盤、実演をアーティストのマネジメント会社がすべて一括で保有しているケースが多く見られます。そのため、マネジメント会社や所属アーティストが「こういう新しい展開をしよう」と考えたときに、他のステークホルダーとの調整なしに機動力をもって即実行することができるのです。たとえば新しい国の新たなプラットフォームに音楽や映像配信をおこなうなど、韓国のように権利が集約されていると社内の決裁だけで許諾がおこなえるのは世界展開を狙ううえでも大きなアドバンテージです。

次のページ:グローバル化を目指す日本の音楽産業に必要なこと

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