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音楽ビジネス「グローバル化」の最前線

走り出しがまるで違うK-POPビジネスの仕掛け グローバルプラットフォームを「Day1」から最大限に活用、「ファンダム」の“布教活動”も世界展開を後押し

BTSの人気が世界的に拡大した背景としてファンダムの力も見逃せない(Getty Images)

BTSの人気が世界的に拡大した背景としてファンダムの力も見逃せない(Getty Images)

 K-POPビジネスの走り出しの速さは、YouTubeでのフル尺音楽ビデオに象徴される。たとえば今年、公開24時間以内のMV再生数暫定1位を獲得したのは、13人組男性グループ・SEVENTEENの『THUNDER』。公開当日に223万再生、24時間で1688万の再生回数を記録した。

 こうしたスピード感の背景には「Day1」の精神がある。デビュー前からSNSを通じたコンテンツの発信は、MV以外にもライブやVlog(動画ブログ)といった関連コンテンツも含み、それらはライブの「ついで」ではなく、それぞれのプロの手により丹念に作られたものだ。そして、満を持したデビュー後、グローバル化に大きく貢献するのがファンの活躍である。ファンたちは「翻訳」を通じた布教活動を行い、国境を超えてその輪を広げていく。ただ「楽しむ」から、アーティストの活躍を応援・支援する主体へと変化するのだ。

 韓国の音楽ビジネスに見られる、こうした「Day1」の発想と、ファンを軸にした拡張性について、ユニバーサルミュージックでデジタル本部長を務め、音楽業界の第一線で活躍する鈴木貴歩氏の著書『音楽ビジネス』より解説する。(全3回の第2回)

アーティスト・マネジメントが直接ファンとつながるプラットフォームを構築

「機動力」というK-POPの強みがわかりやすく表れているのが、YouTubeでのフル尺音楽ビデオの公開をいち早く行ったことです。韓国のマネジメント会社は音楽に関わるほとんどの権利を保持しているので、「すべてYouTubeで無料で見られてしまってはCDやダウンロード販売の売上が落ちてしまうのではないか」という懸念を気にすることなく、話題を呼びアーティストの存在感が高まるプロモーションになるなら、たとえ部分的に売上が下がったとしても、全体としての利益を追求することができるのです。

 2015年にはじまった映像配信プラットフォーム「VLIVE」(2023年にWeverseと統合)もK-POPの躍進を語るうえで欠かせない存在です。メッセージアプリのLINEの開発を行ったNHNJapan(現:LINE株式会社)の親会社である韓国NAVERが運営していました。投稿がおこなえるのはアーティストや彼らが所属するマネジメント企業に限定されており、音楽ライブ、MV、ダンス、ミニドラマなどが配信されています。ライブは有料会員だけが視聴可能、楽曲などのコンテンツのダウンロードは有料などプライシングも設定可能でプロモーションだけでなくマネタイズも図れるようになっています。ライブ配信終了後にはファンが字幕を付けられるのも特徴です。

 世界に対してこのように音楽をはじめとしたコンテンツを配信しようとすると、通常は国内の関係各所と調整のうえ、各国の著作権管理団体や関連企業との契約が必要になりますが、韓国の場合は、シンプルな意思決定と手続きでアーティストとマネジメントがこのプラットフォームを活用することができました。

 このVLIVEには、東方神起・少女時代(SMエンターテインメント)、TWICE(JYPエンターテインメント)、BIGBANG(YGエンターテインメント)、BTS(HYBE)など事務所の枠を超えてさまざまなK-POPアーティストが参加していました。VLIVEE自体はNAVERが運営しているものの、アーティスト・マネジメントが直接ファンとつながるプラットフォーム(Direct to Fan=D2Fモデル)、コンテンツを提供していく場が早くからあったというのは大きなポイントです。

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