日本がいかに恵まれた国であるか、あらためて考えてみたい(写真:イメージマート)
元外務省職員として、ロシアをはじめ世界各国のインテリジェンスや国際情勢を分析してきた佐藤優氏(65)が新たにテーマとして選んだのは、「老後の幸福論」だった。このたび『定年後の日本人は世界一の楽園を生きる』(飛鳥新社)を上梓した佐藤氏が、定年後の生活を送るうえで、いかに日本が恵まれているかについて説いた。
日本にはいたるところにオアシスがある
失われた30年の間、日本の経済は停滞し、手取りは一向に増えなかった。政局は混迷し、世の中には閉塞感が漂っている。
しかし、それでも私は日本がいかに恵まれた国であるかを日々、肌で感じている。とりわけ定年後の生活を送るうえでは、日本は「世界一の楽園」であると指摘したい。
年齢を重ねるほど病気のリスクが増すが、日本は先進国のなかでも稀にみる、低額で高度な医療を享受できる国である。私は2023年に腎臓移植手術を受けたが、高額療養費制度を利用したおかげで、高額な手術費用や免疫抑制剤などの自己負担を低額に抑えられて非常に助かった。
現代生活に欠かせないネット環境も日本は僻地まで完備される。ロシアやアフリカをはじめ衛星を介する国々に比べ、地上の電波設備を用いる日本のネット環境は安定的かつ廉価で賄える。
さらに各都市には大学や図書館、地域センターといった“オアシス”が点在し、市民が自由に利用できる。ネットフリックスなどの動画配信サービスや漫画などの娯楽も充実している。
外交官時代の経験を踏まえても、インフラや公共スペースといった生活環境全般において、高齢者がこんなに暮らしやすい国は思いつかない。
私自身、いわゆる「鈴木宗男事件」の嵐に巻き込まれて外務省を辞めて、一度はすべてを失った。定年後のような“人生のリスタート”を強いられたが、腹をくくって歩み出し、いまでは作家としての第二の人生を謳歌している。
その体験も含め、定年後を豊かに生きる術を考えてみると、何も難しいことはないと気づいた。少し視点を変えてマインドをリセットできれば、誰にでも最大級の幸せが待っている。(談)
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※週刊ポスト2025年11月21日号
佐藤優氏が考える「老後の幸福論」とは

