いっぽう顔認証は、発表会当日に東武宇都宮線の駅に初導入された。2026年度からは、国内の決済端末設置数で約50%を占める決済端末「JET-S(ジェッツ)シリーズ」との連携が始まり、全国のJET-S端末導入店舗で顔認証ができるようになる。また、オフィスやスポーツクラブなどの入退室にも導入される予定だ。
顔認証できる自動改札機。赤い矢印部分に2つのカメラがあり、通過する人の顔を高い精度で識別する。発表会場にて筆者撮影
「SAKULaLa」の最大の特長は、1つのIDで、複数のデジタルサービスの情報を一元管理できることだ。利用者は、指静脈認証や顔認証で決済やチェックイン、改札通過、入退室が「手ぶら」でできるようになるので、決済に使う交通系ICカードやクレジットカード、本人確認に使う会員証、ポイントカードなどを持ち歩く必要がなくなる。
デジタル技術を活用した「手ぶらで生活できる社会」を目指す
「SAKULaLa」は、先述の通り、社会課題を解決するために開発された。現代社会では、労働者不足やデジタル利用の年代間格差、不正・なりすましなどの課題がある。とくに日本では、労働者不足が深刻化しており、社会インフラを維持できるか懸念されている。
「SAKULaLa」は、生体認証などのデジタル技術を活用し、従来係員が目視で行っていた本人確認を自動化し、利用のハードルを下げ、セキュリティレベルを上げることで、これらの課題の解決を目指す。
「SAKULaLa」で社会課題を解決するビジョン。画像提供:日立製作所
「SAKULaLa」のキャラクター。左は「サクラッコ」、右は「ララガイ」。発表会場にて筆者撮影
導入の範囲は、東武グループ以外にも広がっており、2026年度には大手コンビニチェーン(ファミリーマート)に導入される予定だ。
発表会では、3社(東武・日立・JCB)の各執行役員が登壇した。JCBは、「SAKULaLa」のパートナー企業だ。
東武の執行役員経営企画本部長は、同社グループで「SAKULaLa」の先行事例を積み上げ、グループ以外の企業に展開し、行政にも拡大したいと述べた。また、多くの人に「SAKULaLa」を活用してもらうことで、「誰もが安心・快適に手ぶらで生活できる社会」を実現したいと語った。
日立のAI&ソフトウェアサービスビジネスユニット事業執行役員マネージド&プラットフォームサービス事業部事業部長は、金融インフラや交通インフラ、クラウド、公共施設を「SAKULaLa」で利用できるようにするだけでなく、同社の強みであるAIをかけ合わせて、新たな価値を生み出したいと述べた。
JCBの執行役員 ソリューション営業推進部長は、「SAKULaLa」で3つのレス「スマホレス」「カードレス」「本人確認レス」を実現し、生活者の決済ストレスを減らし、店舗オペレーションを効率化すると述べた。また、同社の約5600万店の加盟店網を活用し、「SAKULaLa」の導入範囲を東武線沿線から首都圏・大阪・福岡、そして日本全国に広げるという、意欲的なビジョンを示した。


