高齢者の多くが資産を取り崩さずに“貯めっぱなし”(イメージ)
「思い残すことなく旅立てる」というのは、幸せな最期なのだろう。あれをしておけばよかった、もっとこうすればよかった……そういった悔しい思いをするのは悲しく不幸なことだ。だからこそ、限りある「老後資金」の正しい使い方を知っておきたい。【後悔しない老後資金の使い方・全3回の第1回】
《老後の生活費いくら必要? 中流世帯でも1.4億円》──11月21日、日本経済新聞電子版が出した記事に、都内に住む女性・Aさん(52才)は衝撃を受けた。
「老後資金がいくら必要かは、これまでも議論になっていましたよね。2000万円だったり、4000万円だったりといずれも大きな額だなと途方に暮れていましたが、1億円といわれると、もう宝くじを当てないとどうにもならない金額じゃないですか……」
この金額は、総務省家計調査をもとに試算され、貯蓄額の中央値(1658万円)の世帯の必要額を求めたもの。1か月の平均消費支出は約25万7000円で、65才から95才までの合計金額は約9600万円。貯蓄額が約400万円以下の世帯でも1か月の平均消費支出は約21万6000円で、65才から95才までで必要なお金は約8000万円と試算された。しかも、インフレの時代で物価が上がり続けているいま、実際の必要金額はさらに上振れするとされる。
「老後貧乏」という言葉の刷り込み
「老後のお金」に不安を持つ人は増え、いくら貯めて備えればいいのか途方に暮れている人も多い。マネーコンサルタントの頼藤太希さんが言う。
「インフレ、円安、物価高など、老後どころか現時点での生活が厳しいという人は多く、そのことが将来の老後不安に拍車をかけているのでしょう。
今年6月に公表された内閣府『高齢社会白書』の経済的暮らし向きのアンケートでも、『家計が苦しく、非常に心配である』と回答した人は9%で、5年前に行われた前回調査の5.1%から増えました」
節約に勤しみ、老後のために備え、蓄える──それは人生100年時代を生きる私たちの多くが励んでいることだが、一方で「お金を使いきれずに残してしまう人の方が多い」というデータもある。
「年齢階層別の資産の保有状況を見ると、60~64才にピークを迎えますが、その後の減りは非常にゆるやか。つまり高齢者の多くが資産を取り崩さずに“貯めっぱなし”ということです」(頼藤さん)
「老後貧乏」という言葉の刷り込みが、“使い控え”を加速させていると話すのは社会保険労務士の井戸美枝さんだ。
「最高裁判所が公表しているデータによると、2023年度の時点で相続する人がおらず“遺産金”として国庫に入る財産は1015億円と、10年前の3倍になりました。単身者の増加とともに、相続できないケースが増えたこともあるでしょうが、貯め込んだ結果、認知症などになって使えずに国庫に納められるというかたもいます」(井戸さん)
