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ビジネス

《チャイナリスク顕在化》進む日本企業の「脱・中国依存」 2012年のピーク時から1000社以上が中国から撤退、製造業だけでなくデフレで苦戦する小売り業も店舗閉鎖

インド、タイの事業強化へ

 製造業では今年7月に三菱自動車が中国でのエンジン生産を終了して完全撤退、ホンダも広東省の工場を閉鎖した。

 中国進出の先駆者だった百貨店など小売り業界でも、伊勢丹が上海などの店舗を閉店した。

 各社に理由を聞くと、三菱自動車は「中国の自動車産業と市場が急速に変化し、電動車への移行が想定以上に加速したから」(広報部)、ホンダは「四輪事業基盤の強化を行う為」(広報部)、伊勢丹は「賃貸借契約終了に伴うもの」(広報・IR部)と回答した。

 帝国データバンクの調査では、中国に進出している日本企業の数はピーク時の2012年の1万4394社から2024年は1万3034社へと1000社以上も減っている。

 その代表例は日本製鉄だろう。2024年7月、中国の鉄鋼メーカー宝山鋼鉄との合弁事業を解消すると発表し、中国の生産能力を7割も削減した。そのうえで同社はインド、タイなどでの事業の強化に取り組み、さらに米国のUSスチールを買収したことは記憶に新しい。

 日鉄に合弁事業解消の理由を聞くと、「設立当初の目的は完了したこと、BNA(日鉄と宝山鋼鉄の合弁会社)を取り巻く環境変化を踏まえた」(広報室)と説明する。

 投資理論が専門の経済学者、真壁昭夫・多摩大学特別招聘教授が背景をこう語る。

「製造業は競合する中国企業の製造技術の向上、労働コストの上昇、市場の変化などが撤退の背景にあります。デジタル家電、電子部品、半導体、自動車、自動車部品などは今後もチャイナリスクで距離を取る、あるいは完全に撤退する企業が増える可能性が高い。

 一方、小売業は中国の不動産バブルの崩壊によりデフレ環境が深刻化し、値下げ競争が激化。とくに価格帯の高い商品を扱ってきた百貨店は苦戦を強いられている」

 工場としても市場としても魅力が減じているという指摘だ。中国の景気悪化や日本企業の撤退に伴って日中貿易は輸出、輸入とも減少し、2023年からは米国が日本の輸出先1位に返り咲いている。

 だが、単に中国から撤退するだけでは事業規模が縮小してしまう。

 前出の真壁氏が語る。

「中国事業の縮小・撤退などに合わせて全社で構造改革を進め、事業運営の効率性を引き上げられるかどうかが、脱中国の成否を分けます。加えて、世界的に成長期待が高まっている分野で迅速に高シェアを手に入れる製造技術やノウハウがあるかも重要になります」

 関連記事【《徹底検証》日本企業「脱・中国依存」の現在地 すでにピーク時から1000社以上が撤退 脱中国で生き残るか、中国市場でも稼ぐか──最大のネックとなるレアアース調達への対応も進む】では2024年以降に中国事業を撤退・縮小した主な日本企業の取り組みについてまとめるとともに、「脱・中国依存」を進める上での残された課題、レアアースやレアメタルの調達問題について検証している。

※週刊ポスト2025年12月12日号

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