伊勢丹は賃貸借契約終了に伴い上海の店舗を閉鎖(Getty Images)
高市早苗・首相の「存立危機事態」発言を批判する中国は「日本への渡航自粛」や「日本産水産物の輸入停止」など“報復”をエスカレートさせている。最大の貿易相手国である中国からの圧力にどう向き合うべきか。日本企業の取り組みをレポートする。
影響は日本の基幹産業に及ぶ可能性
中国側の今後の動きについて、第一生命経済研究所のレポートはこう警鐘を鳴らしている。
〈今後はレアアース及び関連製品(ネオジム磁石など)の輸出制限、アニメや映画などのソフトコンテンツの配信制限、日系企業の中国国内での活動制限などの追加措置を打ち出してくるリスクがあり、その影響は日本の基幹産業に及ぶ可能性がある〉
思い出されるのが2012年の尖閣諸島国有化の際の対応だ。対日批判を展開して国民の反日感情を煽り、暴徒化したデモ隊が日系企業の店舗や工場を襲撃、略奪を行なった。
これまで何度もチャイナリスクに振り回されてきた日本は今こそ経済面での「脱・中国依存」を急ぐべきだ、と指摘するのは前述のレポートをまとめた第一生命経済研究所のシニア・フェロー・嶌峰義清氏だ。
「言論の自由を含めた人権に対する解釈が独善的で、中国政府が“敵対的”と判断すれば、制裁を加えて相手国の対応を変えようとする傾向が強い。日本のような民主主義国とは相容れない部分が多い。今後も日本の立場や考え方が中国政府の“逆鱗”に触れるケースは出てくる可能性があり、そのたびに貿易面で様々な障害が生じることは、個別の企業にとっても日本経済全体にとっても、安定的な発展のためには望ましくない。中国依存は低くするべきで、生産基地としても中国以外に工場移転を進めるべき」
とはいえ、中国は米国と並ぶ日本の最大の貿易相手国だ。日本企業がモノを売る世界最大級の市場であり、日系工場が進出する「生産拠点」であり、部品や材料を輸入するサプライチェーンも依存している。そして中国からの訪日観光客は年間800万人を超え、インバウンドの最大の担い手でもある。
果たして日本経済は中国依存から脱することができるのか。
実は、中国から撤退、事業縮小する日本企業は近年大きく増えている。
