レアアースを使わない技術
ただし、日本経済が脱・中国依存を図るための最大のネックが残っている。電子部品など最先端技術に欠かせないレアアースやレアメタルだ。
中国が生産量で圧倒的なシェアを握っており、日本は約6割を中国に依存。中国はレアアースなどの輸出停止をチラつかせ外交圧力の“切り札”に利用してきた。第一生命経済研究所のシニア・フェロー・嶌峰義清氏はこう指摘する。
「レアアースを含めた原材料の調達から部品製造などサプライチェーンに中国が組み込まれていれば、1か所でも輪が切れることで全体の供給が止まってしまう。そのリスクを低減、解消するには経済安全保障の観点から官民一体で中国への依存度を減らしていく取り組みが必要」
日本企業はすでにレアアースを使わないモーター用磁石を開発、使用済みの家電からレアアースを回収する技術の開発を急いでおり、産出国のオーストラリアなどからの輸入も開始した。
問題は高市政権が“官民一体”の動きを進められるかだ。
高市首相は今年10月、来日したトランプ米大統領とレアアースの供給確保に向けた協力に関する文書に署名。日本政府は来年1月から「埋蔵量は需要の数百年分」と見られている南鳥島周辺海域の水深6000メートルの海底でのレアアースを含む泥の試掘に取りかかり、2027年2月には大規模掘削システムの実証に移行する計画だ。
しかし、採算性は未知数のうえ、泥からレアアースに精錬する生産技術は中国が握っている。
官民が連携して課題を乗り越えられるか。
関連記事【《徹底検証》日本企業「脱・中国依存」の現在地 すでにピーク時から1000社以上が撤退 脱中国で生き残るか、中国市場でも稼ぐか──最大のネックとなるレアアース調達への対応も進む】では2024年以降に中国事業を撤退・縮小した主な日本企業の取り組みについてまとめている。
※週刊ポスト2025年12月12日号