みんなで大家さん騒動はどう着地するのか(左は「ゲートウェイ成田」の完成イメージ図、右は柳瀬健一・代表/ホームページより)
本誌『週刊ポスト』が追及してきた不動産投資商品「みんなで大家さん」。個人投資家から2000億円超を集めたものの、1000人超の出資者が返金を求め訴訟に踏み切る事態となっている。
「みんなで大家さん」を傘下に持つ共生バンクグループ代表の柳瀬健一氏(59)は、グループ最大の不動産開発「ゲートウェイ成田」構想が行き詰まると、「企業コンソーシアム」を結成して計画を見直すと言い出した。2022年から2024年にかけてのことである。そして、「企業コンソーシアム」とともに立ち上がったのが、「日本版フードバレー構想」だ。そしてこの計画は二転三転していくこととなる──。ノンフィクション作家・森功氏がレポートする。(敬称略)【全3回の第3回】
湧き出た天然ガス
企業コンソーシアムに参加した企業の関係者はこう話す。
「プラン変更はほとんどが柳瀬氏の発案ですが、変更中に開発用地から天然ガスが噴き出したことがありました。これを食品加工のエネルギーにすればいい、とか、温浴施設をつくろうか、という話まで飛び出しました」
天然ガスの発掘となると、むろん国や成田市の許可が必要になる。なにより滑走路に隣接する土地なので、成田空港の了解を得なければならない。土台、簡単に許可されるような計画ではない。
「天然ガスが地下にどのような形で埋まっているか、それすらわかっていない。仮にガスを抜けば、隣の滑走路が地盤沈下する恐れもあるでしょう。そんなことも考えずに舞い上がってしまったのですから、無茶な話です」(同前・関係者)
結局、天然ガスの発掘はあきらめ、柳瀬は2024年5月、新たなマスタープランを発表した。デジドームなる巨大なアリーナ施設をメインに据え、食料品の冷凍加工「フードバレー」構想や大規模物流センターを建設する計画を立てた。先の関係者が言葉を継いだ。
「デジドームはデジタルドームの略で、デジタル技術のあるトッパン、物流センターは大和ハウス、全体のコンサルをベイカレントに頼み、フードバレー構想のプランをつくりあげました。トッパンが中心になって帝国ホテルで華々しく発表しました。あそこまでは計画変更がうまくいっていた気もします。けれど、その直後に東京都と大阪府の行政処分が下り、すべてが雲散霧消しました」
そもそも計画変更は、共生バンクがあわよくば成田プロジェクトそのものを企業コンソーシアムに譲渡しようとしたことから始まっている。一方で、かき集めた1500億円を超える投資の償還は、あくまで共生バンクが負わなければならない。万が一、1500億円以上で成田プロジェクトが企業コンソーシアムに売れたら、その差額が共生バンクの利益となり、出資者の配当にまわせるが、そんなことはありえない。
「土地開発に慣れた大和ハウスなどは早くから計画に見切りをつけ、『物流センター用地として一部を買ってもいい』と持ちかけた。その金額は1平方メートルあたり12万円ほど、成田空港から借りている以外の共生バンク所有の開発用地はおよそ27万平方メートル。12万円をかけると324億円という計算になるが、1500億円の償還金に対しては焼け石に水でしょう」(同前・関係者)
