小中学生の学力低下が指摘される背景には何があるのか(イメージ)
小中学生の学力低下が注目を集めている。直近の学力調査でも小中学生ともにそれを裏付けるような結果が出ている。その背景には何が考えられるのか。『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』が話題のノンフィクションライター・杉浦由美子氏がレポートする。【前後編の前編】
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小中学生の学力低下が深刻な問題になっている。 2025年7月31日、「全国学力・学習状況調査」の調査結果が公表され、小中学生の学力低下が数字として表れた。小学校の国語・算数、中学校の国語・数学の全国平均正答率が前回の2021年度調査結果より低下し、特に、中学校の国語の記述式問題の正答率の低さが目立つ結果となった。なお、前々回の2016年度と2021年の比較ではほぼ学力低下は見られない。8月1日の記者会見で文部科学省の阿部俊子大臣(当時)も「基本的な概念の理解・定着が十分でない児童生徒がいるなどの課題が明らかになり(中略)大変重く受け止めております」とコメントした。
この結果は多くの塾、学校、そして、小学生の保護者たちからすると「想定内」であったという。なぜなら、2020年の教育指導要領で、探究学習や協働的な学びとしてグループワークを小学校の教育に取り入れていくように定めて以来、知識や技能の指導が軽くなったからだ。
こういった探究学習やグループワークの拡大に対して、都立大学法学部教授で『憲法の学校 親権、校則、いじめ、PTA――「子どものため」を考える』の著者の木村草太さんは次のように指摘する。
「探究学習やグループワークは学びの効率が良いとはいえないため、それらで時間が取られ、計算や漢字ドリルをやったりという習ったことの反復学習をする時間が捻出できなくなってしまうことも」
こういった指摘は他でも耳にすることだ。取材で私が学習塾に行くと、「今、公立小学校で探究や協働的な学び(グループワーク)が拡大した結果、基礎学力がつかないケースが増えている」と多くの講師が話す。高校受験の塾は「中学1年生で入塾してくる子たちの学力が低下していて頭を抱えている」と口を揃えていう。
ある首都圏の中堅塾の校舎長はいう。
「うちの塾では入塾テストを実施しますが、全員が受かるような基準で作ってあります。実際、今まではほぼ全員が合格していましたが、昨今、その入塾テストで不合格になる中学1年生が増えてきました。基礎的な問題中心の入塾テストをクリアできない生徒は、集団授業を受けてもついてこれません。そのため、そういった生徒には、まずは系列の個別指導塾に行くことを勧めています」
そして、こうため息をつく。
「地域差もあります。以前、勤務していた校舎の周辺の小学校では、ちゃんと知識や技能を教えるし、宿題も出ていましたから、学力的に問題なかったんですよ。ところが今の校舎の近隣の公立小学校は探究やグループワーク優先で、宿題もほとんど出さないんですよ。あれじゃあどうしようもないです」
こういった話をたくさん聞いていた私は、過去に2回ほど、“学力低下の原因は小学校での探究学習やグループワークの拡大だ”という内容の記事を執筆し、配信した。
すると、多くの小学生の保護者から「その通りだ」という賛同のコメントが寄せられた。小学生の保護者たちは「公立小学校が基礎的な知識を教えてくれない」という実感があるのだ。
ある保護者はいう。小学生の子供がいる。
「宿題が自由学習でノート1ページを埋めるものなんです。うちは通信講座を受講していて、ドリルもついてくるのでそれをやればいいと思うんですが、『探究学習じゃないと駄目』だそうです。小学生はまず基礎学力をつけるべき時期なのに、なぜ応用である探究学習を優先させようとするのか分かりません」
