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キャリア
小中学生の学力低下問題を考える

《小中学生の学力低下はなぜ起こった?》学習塾関係者も「全員受かるように作った入塾テストに不合格の子が増えている」と嘆き 背景にある“2020年の教育指導要領の変化”

令和7年度全国学力・学習状況調査の調査問題の一例(小学校・国語)

令和7年度全国学力・学習状況調査の調査問題の一例(小学校・国語)

令和7年度全国学力・学習状況調査の調査問題の一例(小学校・国語)

令和7年度全国学力・学習状況調査の調査問題の一例(小学校・国語)

中学受験の塾に通う児童ばかりにメリットがあるグループワーク

 探究学習にせよ、グループワークにせよ、応用学習だ。探究型の国語の授業では文章を読ませ、それについて話し合いをさせる。たとえば、稲作に関する文章を読ませ、その内容について、グループで話し合いをさせたり、調べ学習をさせたりする。

 塾に通っている児童であれば、読解力があるから文章を読みこんで理解ができる。そして、知識も十分に持っている。理科では稲について学んでおり、社会の授業では稲作がどの地域で盛んであるかなどの知識も教わっている。ゆえに「北海道は夏と冬の温度差があることを稲作に利用するんだ」といったような発言をすることができる。

 一方で、塾に通っていない子は稲作の知識もないから「うん、そうだね」と言うしかない。中には問題文を読解できず、ちんぷんかんぷんの児童もいるだろう。

 結果、塾通いをしている子は塾で習った知識のアウトプットの場として、グループワークはプラスになるが、塾に通ってない子にとってはなんら学びにならないケースも起きてくるのだ。

 本来なら「この文章を読んで、考えたことを話し合いなさい」という課題を出す場合、まず、文章を理解させるために解説が必要だろう。文章の中に出てくる「しかし」「すなわち」といった接続詞がどのように機能しているか、そして、稲作とはなにかといった知識を丁寧に伝えてから、グループワークをさせるべきだろう。

 塾に行っている児童からしたら、接続詞の使い方や「稲作とはなにか」といった知識の解説は不要かもしれないが、それを理解していない児童にとっては必要なものなのだ。

 ところがその丁寧な解説をしていたら、グループワークをする時間がなくなってしまう。そうなると、知識の伝達は軽くしてグループワークに時間を割く方針の小学校も出てくる。なぜなら、教育指導要領には「協働的な学び(グループワーク)」をしなさい、とあるのだから。

 今回は小中学生の学力低下問題の原因について考察した。指導要領で探究学習やグループワークを拡大しているために、小学校で基礎的な知識や技能が身につかなくなっている現状について紹介した。後編記事では、この学力低下の要因をさらに考察し、文部科学大臣の答弁から見える課題についても言及したい。

■後編記事:「学力低下の原因は“探究的・協働的な学び”の偏重ではないか」と塾関係者 「読み書き計算ができない子が増えてしまう」教育現場から漏れる“深刻な危機感”

【プロフィール】
杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)も話題に。『ハナソネ』(毎日新聞社)、『ダイヤモンド教育ラボ』(ダイヤモンド社)、『東洋経済education×ICT』などで連載をしている。受験の「本当のこと」を伝えるべくnote(https://note.com/sugiula/)のエントリーも日々更新中。

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