中国の不動産大手・万科企業がデフォルト危機に(Getty Images)
中国経済に精通する中国株投資の第一人者・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。中国の不動産企業が直面する苦境についてレポートする。
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深セン証券取引所開設と同時に上場、中国不動産業界を長年牽引してきた万科企業(02202:香港上場、000002:深セン上場)が、デフォルト危機に瀕している。
12月15日に償還期限が到来した3年満期、表面利回り3%、発行額20億元の私募社債について、その支払い条件変更を求めて債権者(85%が金融機関)との協議を進めてきた万科企業だが、猶予期間(5営業日)最終日になって、返済猶予を30営業日延長することで話がまとまった。新しく決まった返済期限は2026年1月28日である。
今月28日には別の社債37億元の償還期限が到来するが、こちらも支払いスケジュールの変更が必要となるだろう。さらに、2026年には123億6600万元、2027年には22億5000万元の社債が償還期限到来となる。
財務状況の推移をみると、2023年12月末時点では現預金が998億元に対して、1年以内に期限の到来する有利子負債は624億元と余裕があった。しかし、2024年6月末では前者が924億元に対して後者は1020億元と逆転、2025年6月末は740億元に対して1554億元と資金不足が顕著となっている。
財務状況が悪化しているのは万科企業だけではない。新型コロナ発生前には最大手クラスであった恒大集団は既に破産、清算段階に入っており、同じく当時も、現在も大手クラスの一角に留まる碧桂園(02007)は財務状況の悪化からオフショア債務について支払い条件の変更など債務の再編を余儀なくされている。その他、融創中国(01918)、広州富力地産(02777)をはじめ、中央系国有企業を背景に持たない民営系は総じて厳しい。事業の大幅縮小、リストラなどに追い込まれている。
ちなみに、万科企業の筆頭株主は深セン市政府系企業(深セン市地鉄集団)であり、民営系ではない。万科企業、碧桂園とともに大手クラスの一角を占める華潤置地(01109)、中国海外発展(00688)は中央系国有企業の傘下企業であり、営業面、財務面で強力なサポートがある。深セン市地鉄集団は万科企業に対して、これまで再三にわたり財務支援を続けてきたものの、体力に限りがある。深セン市地鉄集団の決算書をみると、2024年12月期、2025年1~9月期ともに大幅赤字となっており、万科企業への支援による投資損失の発生が主な赤字の要因である。支援したくても、おいそれとはできない状況だ。
