富裕層家庭で頻繁に起こる「教育虐待」
近年、「親ガチャ」という言葉が流行っています。親によって子の将来が左右されてしまうという意味です。確かに、人が成長するうえで家庭環境がいかに重要かは、加害者家族と接していて痛感しています。
しかし、親にお金があれば幸せかといえば、必ずしも経済状況だけで幸福が保証されるとは思いません。DVや虐待は富裕層家庭でも起きています。子どもの意思を無視して受験勉強を強いる教育虐待は、富裕層家庭で頻繁に起きています。
進学にあたって親の収入が少ない場合、奨学金制度が利用できますが、親に収入があれば利用できません。したがって、経済力のある親こそ自分の意思を押し付け、レールを敷いてしまい、子どもはそこから逃れられない状況が起こるのです。親がエリートや著名人であることは、子どもにとって大きなプレッシャーになることも少なくありません。
子どもは親を選べないのですから、「お金持ちだから恵まれている」と一方的に羨んだり、そうした価値観を押し付けたりすることで、家庭に悩みを抱える子どもの心を閉ざしてしまわないよう、大人たちは注意しなければなりません。
地元の名士の子による犯罪というのも多数、受理した経験があります。田舎のお金持ちはとにかく目立つのです。地元の人たちは皆、自分を知っていて、常に監視されているような緊張感の中での生活は、相当ストレスフルだと想像できます。
地域でいじめられたり、いじめられる恐怖からいじめっ子になったというケースもよく聞きます。いずれも、家庭環境という本人が選べない事情から生ずる問題です。著名人や富裕層の子どもが事件を起こすと、必ずと言っていいほど「親が甘やかしたからだ」といった批判が上がります。
しかし、親が援助を与えすぎてしまう背景には社会不信があり、「お金があるなら自分でなんとかしろ」という世間からのプレッシャーが、問題を家庭に閉じこめているのです。
*阿部恭子著『お金持ちはなぜ不幸になるのか』(幻冬舎新書)より一部抜粋して再構成。
(第3回に続く)
【プロフィール】
阿部恭子(あべ・きょうこ)/NPO法人World Open Heart理事長。東北大学大学院法学研究科博士課程前期修了(法学修士)。2008年大学院在学中、日本で初めて犯罪加害者家族を対象とした支援組織を設立。全国の加害者家族からの相談に対応しながら講演や執筆活動を展開。今まで支援してきた加害者家族は2000件以上に及ぶ。著書に『息子が人を殺しました』『家族という呪い』『家族間殺人』(いずれも幻冬舎)、『加害者家族を支援する』(岩波書店)、『高学歴難民』(講談社)、『近親性交』(小学館)など多数。