意外に思うかもしれないが、「社風が良い会社」というのも下降トレンドを示している。これは前出・SHIBUYA109エンタテイメントによる「Z世代の仕事に関する意識調査」において、「食事に頻繁に誘ってくれる」とか「友達のように接してくれる」といった項目に全く票が集まらないのと同じで、社風が良いということは、上司や先輩とも距離が近いという印象を持つ。これが今の若者には受けが悪いのだ。
逆に上昇基調にあるのは、「安定している会社」で、2025年には2位と20%の差をつけて50%を記録し、もはや一強状態。その他、「給料の良い会社」「休日、休暇の多い会社」も人気増加中となっている。
なお、ここで言う「安定」とは、倒産しないとか、すぐクビならないといった職場ではない。もちろんそんなリスクのある職場であれば不安に感じることは間違いないが、今の若者は原則として引く手数多の売れっ子世代だ。ある程度業績の良い会社を選別できる立場にある。
彼らの言う「安定」とは、メンタルのそれだ。精神的なアップダウンがなく、とにかく穏やかに、ゆっくりと、確実に成長できる職場を好む。
もちろん転職の可能性は頭にあるし、場合によっては退職代行サービスもありだと思っている。転職サービス会社にもちゃんと登録している。ただ、好き好んで転職したいわけではない。“安定した”職場であれば、ずっと働きたいと考えている。
さて、ここまで読んできて、「そんなぬるいこと言ってないで、若いうちにしか経験できないことは多いんだから、もっと気合を入れて仕事したほうがいい」と感じる上司・先輩世代の読者も多いかもしれない。むろん、そこはそう“感じる”だけで、実際に声に出したりはしない。ハラスメントになったら大変だ。
*金間大介・酒井崇匡著『仕事に「生きがい」はいりません 30年の調査データが明かすZ世代のリアル 』(SBクリエイティブ株式会社)より一部抜粋して再構成
(第2回に続く)
【プロフィール】
金間大介(かなま・だいすけ)/金沢大学融合研究域融合科学系教授、東京大学未来ビジョン研究センター客員教授、一般社団法人WE AT(ウィーアット)副代表理事、一般社団法人日本知財学会理事。横浜国立大学大学院工学研究科物理情報工学専攻(博士〈工学〉)、バージニア工科大学大学院、文部科学省科学技術・学術政策研究所、北海道情報大学准教授、東京農業大学准教授などを経て、2021年より現職。博士号取得までは応用物理学を研究していたが、博士後期課程中に渡米して出会ったイノベーション・マネジメントに魅了される。それ以来、イノベーション論、マーケティング論、モチベーション論等を研究。『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』(東洋経済新報社)『静かに退職する若者たち』(PHP研究所)など、著書多数。
酒井崇匡(さかい・たかまさ)/博報堂生活総合研究所主席研究員。2005年博報堂入社。マーケティングプラナーを経て、2012年より博報堂生活総合研究所に所属。 デジタル空間上のビッグデータを活用した生活者研究の新領域「デジノグラフィ」を様々なデータホルダーとの共同研究で推進中。 行動や生声あるいは生体情報など、可視化されつつある生活者のデータを元にした発見と洞察を行っている。