かつては半袖の背広に簡略ネクタイの「省エネルック」も話題に(1979年撮影。時事通信フォト)
夏場の熱中症予防のクールビズには理解を示すが…
私自身もその考え方には賛同します。1990年代後半の会社員時代、会議に参加していた外注先の人(50代)が、急いで来たのか汗をダラダラ流し、途中「暑いのでジャケットを脱がせていただきます」と言い、ネクタイを緩める姿を見ていました。“暑いんだったらさっさとそうすればいいのに……”と思ったのですが、この人にとっては得意先でジャケットを着ないのは失礼な行為だと捉えていたのでしょう。
A氏も同様の考えだったのでしょうが、こうも言います。
「最近の夏の暑さについては、クールビズもノーネクタイ・ノージャケットも妥当な判断だと思います。それは仕方がない。熱中症が心配だ」
そう言いつつも、「私らの頃は、会社に冷房がない時代もあったんですけどね……」とも。もちろん、かつてと比べると昨今の夏の暑さは尋常ではないため、A氏の現役時代と一緒にすることはできませんが、それでも一言言わずにはいられない気分なのでしょう。
なんだかんだ言って、当時のモーレツサラリーマンの中には、昨今のビジネスマンの自由な恰好に違和感を覚えている人もいるのです。今の人にそれを強いるのが正解かどうかは別にして、それだけ、自分の仕事に誇りを持っていたことの証左とも言えます。
ちなみに、現在スーツを着ることはないA氏ですが、シャツをパンツから出すのははしたない行為だと考えており、絶対にシャツインですし、夏に外出する時はTシャツから襟付きシャツに着替えるような信念を持っています。このキッチリさ、私には到底マネできません……。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は稲熊均氏との共著『ウソは真実の6倍の速さで拡散する』(中日新聞社)。
