「地方創生×テクノロジー」が模索されている(イメージ)
人口減少や産業の空洞化に直面する地方。そうしたなか、現場では新しいビジネスの波も起きている。
中小企業向け経営支援プラットフォーム「Big Advance(ビッグアドバンス)」を運営する株式会社ココペリ代表取締役CEO近藤繁氏の著書『稼ぐ地方 日本のさまざまな地域で「新しい価値」を生み出す人たち』では、「地方創生×テクノロジー」という視点から、「二重価格」と「地域通貨」がもたらす利点について解説している。日本人向けの価格と外国人観光客のラーメンの価格を変えるという課題をどう解決するのかを考察する。(同書より一部抜粋して再構成)。【全4回の第1回】
テクノロジーの使い方は地域によって違う
テクノロジーの進化は“地方の自立の再来”の絶好の機会だと私は考えていますが、「地方創生×テクノロジー」の非常にわかりやすい例のひとつに、「地域通貨」が挙げられます。
地域通貨というと、「ああ、キャッシュレス化でお会計が楽になるやつだね」と一様に捉えられがちです。しかし、実際の地域通貨は、PayPayのような全国一律で使えるキャッシュレス決済とは違い、地域ごとにその形態が異なっています。
地域通貨の活用を通じて、コミュニティや地域経済の再構築を手掛ける「フィノバレー」という会社があります。同社代表の川田修平さんによると、本来、地域通貨は「地域の課題を解決する通貨」とのこと。キャッシュレス化は、その課題解決の選択肢のひとつに過ぎません。
同じ地域通貨という仕組みであっても、地域の課題が違えば、使われ方も違う。ここでは、川田さんから伺ったお話を少し紹介します。
長野県の白馬村には、海外から多くの観光客が訪れています。円安の影響もあり、彼らは1500円や2000円といった、日本人の感覚からするとかなり値段の高いラーメンにも、喜んでお金を払ってくれます。ただ、地域の物価がその水準まで上がると、地元の人が日常的に食べることはできなくなってしまいます。だからといって、明らかに「この値段は安い」と感じている海外からの観光客に、ラーメンを1000円で売るのは、機会損失ともいえるでしょう。
その解決策のひとつとして考えられていたのが、白馬村や隣の小谷(おたり)村で2025年11月からスタートした「アルプスPay」です。これは主に村民が使う地域通貨で、基本的に海外からの訪問者は利用できません。
たとえば、現金などで支払う場合にはラーメンが1500円であっても、アルプスPayで支払う人には、500円分のポイント還元が行われる。いわば「地元割引」のような仕組みなのです。この仕組みによって、海外からの観光客と地元住民に対して2つの価格帯を提供することが可能となり、「地元を守りながら、稼ぐ地方」を実現できます。
