好奇心を持ち続ければ脳も気持ちも若くいられる
誰かに会うと、そこからさらに別の人につながる。そうして多様な人たちと接することで自分の世界が広がり、さらに人生が豊かになることを実感する。歳を取るほど、たくさんの人に会うことを勧めたい。
最近最も影響を受けたのは、大阪大学名誉教授の仲野徹先生だ。稀代の読書家で、65歳で定年退官されたあとも本を多読し、畑を耕し、義太夫語りを習い、パタゴニアなど聞いてもどこにあるかわからない海外の土地に行っている。
仲野先生は僕より年上の68歳にもかかわらず、知りたがりで、今でも「おもしろがる力」を発揮できる。そんな先生は僕のお手本だ。先生をみていると、歳とともに感動力が衰えた自分も感性をビビッドにして若々しくいたいと思う。
残りの人生で、おもしろいと思えることがたくさんあれば、こんなに素晴らしいことはない。好奇心を持ち続ければ脳も気持ちも若いままでいられるのである。
年齢以外にある“僕自身が変わったきっかけ”
それでも、“もう歳だから”と諦めてしまう人もいるだろう。実は、僕自身が変わったきっかけは、年齢以外にもう一つある。
2012年、僕は先天性難病のために人工呼吸器をつけて自宅で暮らしている9歳の子に出会った。いい言葉ではないが、“寝たきり”である。その子は1歳9か月のときから在宅での治療になったのだが、両親は「当初はつらかったけど、5年が経った頃から、その生活が楽しいと思えるようになった」と言っていた。
僕が還暦を迎える1年前、改めて母親に生活を楽しむコツを聞いたら、答えは「発想を転換する」ことだった。その通りだと思う。
残り少ない人生だから頑張っても無駄、と考えるのではなく、残り少ないからこそ密度の濃い時間をつくることができる。難病の子の家族や母に教わって、僕も考えを変えられた。誰にでもできるはずだ。
ほんの少し時間の使い方を工夫するだけで、何歳になっても人生は輝くのである。
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前編記事《【定年後の人生を輝かせる「1日の時間割」】ベストセラー医師・松永正訓氏が教える生き方のヒント 「趣味を絞る」「文字に残す」…脳が活性化される習慣》では、松永氏が考える、60歳を過ぎてから人生を輝かせるための“時間割”について紹介している。
(前編から読む)
※週刊ポスト2026年2月27日・3月6日号