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中国が技術・コストで圧倒する「フィジカルAI」の脅威 技術の進化で激変する軍事バランス「世界秩序の潮目が大きく変わった」と大前研一氏

中国の「フィジカルAI」分野の発展は大きな脅威に(イラスト/井川泰年)

中国の「フィジカルAI」分野の発展は大きな脅威に(イラスト/井川泰年)

 生成AIの急速な進化が注目を集めているが、同時に技術開発が進んでいるのが「フィジカルAI」の分野だ。ヒト型ロボット(ヒューマノイド)や自動運転技術などの開発に世界の企業が鎬を削る中、経営コンサルタントの大前研一氏は「中国企業の存在感がどんどん大きくなっている」と指摘する。中国がフィジカルAIの分野で存在感を示すようになったことで、世界にどのような影響があるのか。大前氏が解説する。

 * * *
 フィジカルAI(人工知能)が生成AIとともに、世界の技術開発の“主戦場”になっている。

 生成AIとフィジカルAIの違いは、活動領域だ。前者はAIが情報空間で知的業務の効率化を図り、後者はAIが物理空間で自律的に機械を制御する。

 フィジカルAIの具体例はヒューマノイド(ヒト型)ロボット、自動運転技術、医療・介護支援ロボット、生産・物流ロボット、調理ロボットなどで、この領域では中国企業の存在感がどんどん大きくなっている。

 1月にアメリカ・ラスベガスで開催された世界最大級の電子機器見本市「CES」でも、AI関連商品は“量”で中国勢が圧倒していた。まだ“質”ではアメリカのほうが上だが、中国が肉迫しているので、逆転するのは時間の問題だろう。

 すでに家電は中国勢の独壇場である。たとえば、ロボット掃除機。アメリカの調査会社IDCによると、2025年上半期の世界シェアは1位のロボロック(石頭科技)をはじめ、トップ5のうち上位4社が中国企業で、かつて1位だった「ルンバ」で知られるアメリカのアイロボットは5位に転落した。そしてアイロボットは、中国勢との競争激化で業績が悪化して昨年12月に破産し、「ルンバ」の製造を委託していた中国企業ピセアグループ(杉川集団)の傘下に入った。日本の家電メーカーはさらに弱小で、コスト力でも開発力でも中国勢に太刀打ちできない状況になっている。

 EV(電気自動車)も中国企業が強い。2025年のEV新車販売台数は、中国のBYD(比亜迪)が226万台でアメリカのテスラ(164万台)を抜き、初めて世界一に躍り出た。BYDはHV(ハイブリッド車)も製造しているので、EVとの合計販売台数は460万台に達し、本田技研工業や日産自動車を上回って世界第5位の大手自動車メーカーになった。

 中国の自動車メーカーはEVを作りすぎて“EV墓場”ができているという報道もあるが、BYDはわずか半年でハンガリーに工場を建設した。そんな芸当は日本や欧米の自動車メーカーにはできないから今後もBYDの進撃は続くだろう。

 テスラが高級EVの生産・販売から撤退し、生産品目をヒューマノイドに切り替えると発表したのは、そう見切ったからである。

 ただし、ヒューマノイドでも中国勢が目覚ましく台頭している。

 たとえば『日経ビジネス』(1月19日号)によると、昨年11月に中国のEVメーカー小鵬汽車(シャオペン)が発表したヒューマノイド「IRON」は、中に人が入っているかのごとく滑らかに動き、世界を驚かせた。

 また、2月16日の旧暦大晦日にCCTV(中国国営中央テレビ)で放送された「春節」を祝う年越し番組では、ヒューマノイドがカンフーやバク転を披露したり、壁を駆け上がって1回転したり、高い台を飛び越えたり、衣服をたたんだり、割れたガラスをつかんだりしたと報じられている。

 中国には昨年11月時点で150社以上のヒューマノイド企業が存在し、それらの企業に対して地方政府が支援策を打ち出してヒューマノイドによるハーフマラソン大会や運動会を開催するなど、挙国体制で開発を推進しているのだ。

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