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ファミコン登場が引き起こした「おもちゃ業界の革命」 小売もメーカーも勢力図が一変、定価販売の慣行が崩れ地域一番店も消えていった

ファミコン登場はおもちゃ業界をどう変えたのか

ファミコン登場はおもちゃ業界をどう変えたのか

『ファミ通ゲーム白書 2025』(KADOKAWA)によると、2024年の世界ゲームコンテンツ市場規模は31兆42億円にものぼるという。いまやゲーム機やソフトは家電量販店やスーパーマーケットの「おもちゃコーナー」で当たり前に陳列されているが、1970年代に遡ると、その場所には超合金や鉄道模型、着せ替え人形などが並んでいた。その光景を一変させたのは、1983年に発売された『ファミリーコンピュータ』(任天堂)だ。

 1970~1980年に流行した『LSIベースボール』(バンダイ、1978)や『ゲーム&ウオッチ』(任天堂、1980)などの「LSI(電子)ゲーム」を起点として台頭し始めた「ゲーム」。『ファミコン』の登場がおもちゃ業界にもたらした“革命”について、元KADOKAWA社長・佐藤辰男氏による著書『エンタメ(IP)100年史 創業者のエウレカ、継承者の転換』より、一部抜粋・再構成して紹介する。

おもちゃの小売環境の劇的変化

『ファミコン』の登場は、おもちゃの小売環境も劇的に変化させた。

 ぼくが『週刊玩具通信』の記者だった時代、おもちゃ販売の主流は、新宿小田急や伊勢丹、池袋西武百貨店、横浜高島屋、千葉そごう、梅田の阪急百貨店をはじめとする各地の百貨店、大型店は原宿キデイランドに銀座博品館、それから県庁所在地などの駅近にあった地元の老舗玩具店などだった。

 戦争が終わってから子どもの数がどんどん増えた日本では、いわゆるそのときそのときのヒット商品はもとより、ベビーカー、乗用(三輪車、子ども用自転車、足漕ぎ自動車)、3月・5月の節句もの、夏冬の季節ものなどを百貨店か地元の老舗で買う習わしがあった。

 おもちゃ屋さんと本屋さんは、地元の資産家が駅近などの一等地に店を構えていた。札幌のカネイ小川やトイスター、仙台の白牡丹、上野の山城屋(ヤマシロヤ)、銀座の金太郎、東京・原宿、そして大阪・梅田のキデイランド、京都のだるまや、熊本のポレエル……。まだ頑張っている店もあれば、もうなくなってしまった店もあるが、ぼくにとっては懐かしい。

 おもちゃの小売環境が劇的に変化したきっかけは、異業種からの参入だった。これを許した端緒は『ファミコン』の登場だったと『一般社団法人日本玩具協会設立50周年記念誌』(設立50周年記念誌編集委員会編、日本玩具協会)は記している。

 1983年7月に『ファミリーコンピュータ』が発売され、『スーパーマリオブラザーズ』(1985年)、『ドラゴンクエスト』(1986年)などの高額で大量販売が可能な商材が次々に投入されたことが、他業界小売には魅力的に映ったのか、バブル景気の恩恵と自動車社会への転換という背景もあって、靴や書店のナショナルチェーンがロードサイドに大型玩具店を展開し始めた。

 1985年に始まるおもちゃのBAN BAN、ハローマックといった大型玩具郊外店の攻勢は、最盛期の1996年には900店を数えたという。決定的だったのは、アメリカからトイザらスが上陸した(1号店は1991年)ことだった。1990年代、トイザらスの日本上陸は、日米貿易摩擦の象徴と言われた。2000年代に入ると、おもちゃやゲームの小売環境は家電量販店、ネット通販の台頭というさらに大きな環境変化に見舞われるが、ここでは触れない。

 この変化にともなって、おもちゃの商習慣も崩れた。

 かつておもちゃは、出版物と同様に定価販売が守られていた。雑誌・書籍は、著作物再販制度のもとに出版社が定価を指示できる数少ない商品で、近年電子書籍は除外されたものの、紙の世界はまだこの制度下にある。おもちゃは、著作物再販制度の対象品目でもないのに、慣行によって定価が維持されていた珍しい商品だった。

 1950年代後半~1970年代に急成長したスーパーマーケットは、おもちゃ業界の慣行に従わず値引き販売したが、これにメーカーが出荷停止で対抗するなど、業界の結束はまだ固かった。メーカーと一次問屋の強い統制力と、地方の問屋と玩具店の強い絆が、これを守っていた。しかし、『ファミコン』登場後の外部からの攻勢には抗しきれなかった。1980年代後半の他業界からの進出で定価販売の慣行は崩れ、百貨店からおもちゃが消え、地域一番店が消え、業界地図は一挙に変わった。

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