覚書でも雇用契約に問題はないのか(写真:イメージマート)
会社の従業員として働くことは、雇用契約が締結されたことを意味する。その際、雇用契約書や覚書を作成する必要はあるのか。実際の法律相談に回答する形で弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
ある会社に非正規雇用されました。入社前に賃金の支払い方法や社内規則などが記された覚書に署名したのですが、こういう場合、契約書のほうに効力があるのではないでしょうか。会社には覚書ではなく、契約書を作ってもらえるよう求めるべきですか。それとも覚書も契約書も、さほど違いはないのですか。
【回答】
従業員として働くのは、会社との間で雇用契約が締結されたことを意味します。ただし、法は特に雇用契約書という書式の作成を義務付けてはいません。法が雇用主に課しているのは、労働条件の明示義務です。雇用主は賃金、労働時間、契約期間、賃金の算定方法、退職に関する事項等の一定の労働条件を文書にして労働者に渡さなければなりません。もっとも労働者が、FAXや電子メールでの通知を求めた場合には、これらの方法によることもできます。
即ち雇用主は文書交付を原則とし、例外的にFAXや電子メールといった客観的に記録に残る形で労働条件を明示する必要があるのですが、特段、契約書という形式にすることを求められてはいないのです。そこで覚書との表題の書面であっても、そこに法定事項が記載されていれば労働条件の明示として不足はなく、あなたも署名しているので、記載の労働条件で合意したことが明らかになります。従って雇用契約が成立していることは間違いないですし、改めて契約書作成を求める必要はなく、その権利もありません。
