スキルは「どう」身につけるかが大事になってくるという(イメージ)
今の私たちは、気づかぬうちに一昔前の“成功者”とほとんど変わらない生活を手にしている。映画や音楽、本はサブスクリプションで無制限に楽しめ、豪華な別荘もAirbnbなどを使えば一時的にではあるが満喫できる。インターネットの普及によって、かつて特権だった「情報の優位性」は失われつつある。では、こうした「均(なら)された世界」において、新たな違いを生むのは何か。
その答えを「体験」に見出すのが、アーティストであり実業家でもある長谷川雅彬氏だ。スキルが急速にコモディティ化し、誰もが世界規模の競争に晒される今、何を学び、どう生きるかは「どんな体験に投資してきたか」によって大きく左右されるという。スキルではなく体験が、人生やキャリアの競争優位性になる理由とは何か。長谷川氏の著書『君は体験に投資してるか』から一部を抜粋・再構成して紹介する。【第1回】
「特定のスキルを持てば強い」時代はもう終わっている
人生100年と言われるようになって久しいが、過去20年の間に日本では平均寿命が3歳ほど伸びておよそ85歳、世界平均では7歳近く伸びて73歳に到達している。仮に65歳で定年退職したとしても、その先20年もの間、何をして過ごすのかは、お金の問題と同様に新たな問題として浮かび上がっている。
定年後に再雇用という方法で、もといた職場で働く人も増えている。
しかし、5年、10年、もしくは20年先の再雇用のためにどういったスキルが求められるかを今から正確に予測できるだろうか? それはルーレットで自分の未来を決めるようなものだ。そういった意味でリスキリングに何を期待しているのか、またどういった意味があるのかを再考するタイミングかもしれない。
例えば、AIやビッグデータ、UXやUIなど、現代にはびこるバズワードは10年前にはほとんど使われておらず、20年前には存在しないに等しかった(多くの人にとって)。また、今でもこうした分野を深く理解するには相当な時間と経験が求められるため、なかなか仕事に活かしきれない人が多いのではないだろうか。
実のところ、欧米ではコンピューターサイエンスやグラフィックデザインは立派な専門分野で、大学で4年間学ぶことが就職の最低基準という場合も多い。リスキリングというポップな表現とは裏腹に、求められる学習濃度は非常に高いのだ。変化の速い時代は求められるスキルもすぐに変わってしまう。それも信じられないほどのスピードで。
しかし、一つ一つをマスターすることはそう容易ではない。
また、世界中がつながり便利な世の中になった反面、スキルを活かすための競争も激しくなった。それは、グローバルプラットフォームの登場とコロナ禍によって刺激された働き方の柔軟化で、多くのタスクは外注できることが明らかになってしまったからだ。
業務を発注する側にとっては、BehanceやUpwork等のプラットフォームを駆使することで、簡単にプロフェッショナルやフリーランサーを世界規模で探せるようになった。
例えば、私自身が過去に巨大なアート作品を創った際は、イタリア人のビデオグラファーとチームを組み、撮影した動画をウクライナのチームが仕上げ、スペイン人の広報担当者が各地のメディアに共有し、アメリカで記事になるといったことが実際にあった。
スキル市場はグローバル化しており、特定のスキルを仕事にするということは、AI以上に世界中の人々と競争することになるということを覚えておこう。
