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ビジネス
地面師連絡役カトウ

「刑事にも言わなかったことを話す」積水ハウスを騙した地面師グループ連絡役が告白する“フィクションと現実のギャップ”「詐欺に使う道具も役者もドラマほど巧妙ではない」

積水ハウス55億円詐欺事件「地面師たちの人物相関図」

積水ハウス55億円詐欺事件「地面師たちの人物相関図」

きっかけは「ハプバー殺人取材」

 カトウとの出会いのきっかけは2024年1月、足立区で起きたハプニングバーのオーナー夫婦の殺人事件だった。

 殺人容疑で逮捕されたフィリピン人女性は、フィリピンパブのホステスだった。私はこのパブに、積水詐欺事件の主犯格のひとりとされるカミンスカス操(逮捕当時59歳)が足繁く通っていたことを知ったのである。

 被疑者女性とカミンスカスの2ショットを手にした私は、カミンスカスを知る者に本人確認をする必要があった。そこで知人を介し、カトウを紹介してもらったのだ。

 当時はカトウがどこまで積水詐欺事件に関わったのかは知らされていなかった。しかし数回会ううちにその正体を知り、重大事件の実行犯と思わぬ出会いをしたことに少なからず興奮を覚えた。

 だが、カトウには私の取材に協力するメリットはない。何度か口説く中での決め手はドラマ『地面師たち』の配信だった。カトウは「フィクションとして最高に面白かった」と言う一方で現実とのギャップをこう話した。

「あんなに簡単に交渉は成立しないし、実は詐欺に使う道具も役者もドラマほど巧妙ではありません。共通点は、その場凌ぎで騙して逃げ切るところだけだと思いました」

 私がドラマと現実の違いを書きたい旨を再度伝えると、カトウはこんな殊勝なことを言った。

「俺は起訴された10人で唯一自首した。4年ほどの刑務所生活でもう犯罪はしないと強く後悔した。

 俺は借金に追われ首が回らなくなって、一攫千金を夢見て罪を犯してしまった。詐欺に加担する若者が思い留まる一助になるなら、俺の人生がなぜこうなったのか、文字で見たくなってきた」

 そして「刑事にも言わなかったことを話すから、書く時は実名にしないでほしい」と条件が示され、取材の道のりが始まった。

 2025年、特殊詐欺の被害総額は年間で過去最多の1414億円にも及んだ。実行役を担う若者は多額の借金や困窮を理由に、犯罪に加担することがほとんどだ。

 指示役にいいように使われる若者やカトウのような者がいるからこそ詐欺犯罪は成り立つのだと、カトウの話を聞いて強く感じることになる。

第1回・後編につづく

【プロフィール】
河合桃子(かわい・ももこ)/1977年、東京都生まれ。ライター。週刊誌を中心に執筆。幅広く取材活動を行なっており、特に性風俗にまつわる事件などアングラな業界を長年取材している。積水ハウス55億円詐欺事件の実行犯を取材した『地面師連絡役カトウ』で、第32回小学館ノンフィクション大賞を受賞。同書は6月18日に発売予定。

※週刊ポスト2026年6月5・12日号

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