*11:08JST 上新電機 Research Memo(8):2027年3月期も増収増益の見通し、商品構成の変化等で利益改善を期待(3)
■Joshin<8173>の今後の見通し
(5) Joshin Reborn Action 2026における重点戦略
1) PB(プライベートブランド)商品の本格展開
PB商品は、Joshin Reborn Action 2026において収益力強化に直結する重点戦略である。同社は2025年度に商品部内へ専任部署を設け、OEM供給先を複数開拓した。2026年度は中小物家電を中心に150アイテムを目標として順次発売する計画である。対象商品は電池、電球、ハンディクリーナー、電子レンジ、炊飯器、電気ケトルなどであり、将来的にはエアコンを含む家電全般へ広げる。2028年度にはPB売上構成比10%、PB商品開発目標500アイテム以上、PB商品粗利率の2025年3月期比5%改善を目指す。PBの強化は、価格と性能のバランスを重視した独自商品の投入により、粗利率の改善と他社との差別化を両立する施策である。
2) EC・OMO戦略
EC・OMO戦略では、自社サイト販売比率を2026年度に44%から46%へ高め、2028年度に5割とする計画である。2026年度は、リアル店舗とECの相互利用稼働会員数を前期比15%増、自社サイト稼働会員数を同7%増、家電製品販売額を同2%増とすることを目指す。リアル店舗とECを併用する会員は購入回数と購入金額が高く、同社は相互利用会員をコアファンと位置付ける。アプリ機能やサービスメニューを拡充し、店舗と自社ECの相互送客を増やすことで、顧客生涯価値の向上を狙う。
これまでの販売促進型から、顧客起点のデータドリブン型へ転換することも重要な施策である。とりわけ女性・若年層へのリーチを強化し、顧客層のバランスを最適化することを狙う。アクティブ会員数は年率1%増を目標とし、自社のビッグデータと社外ネットワークを活用した1to1マーケティングを深化させる。また、リアル店舗とECでの利用状況に応じて特典を利用できる「ジョーシンスマイルプログラム」を活用し、店舗とECを横断するOMO戦略を推進する。
3) リフォーム事業の領域拡張
リフォーム事業では、ジョーシンリフォーム近畿を含む売上高を2026年3月期165億円から2027年3月期190億円、2029年3月期には200億円規模へ拡大する計画である。従来のパックリフォームに加え、専門性が必要なオーダーリフォームへ進出するため、同社は2026年2月にDOのリフォームを完全子会社化し、ジョーシンリフォーム近畿へ商号変更した。まずは関西エリアで展開地域を広げ、Joshin店舗や自社ECサイトでの受注体制を整備する。外部企業との協業やM&Aも視野に入れ、生活支援領域での収益基盤を広げる考えである。
4) アウトレット戦略と資本効率改善
アウトレット戦略は在庫効率を改善し、リアル店舗事業の収益力を高める施策である。同社は業績不振店舗の一部をアウトレット業態へ転換し、東西2拠点物流体制を生かして大量在庫の削減と在庫回転率の改善を進める。アウトレット業態は不採算店舗の見直しと在庫適正化を同時に進める取り組みであり、Joshin Reborn Action 2026における店舗ポートフォリオ再構築の一部を担う。これにより既存資産を活用しながら収益機会を広げ、店舗運営の効率化を図る。
(6) 資本政策
資本政策の柱は「効率性と成長の両立」にある。2027年のリース会計基準改正も見据え、バランスシートの最適化を進める。資本コストや株価を意識した経営を徹底し、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)や交叉比率(粗利益率×商品回転率により算出)の改善を推進する。前述したアウトレット戦略や店舗ポートフォリオの見直しは、その具体策の一部であり、資本政策の面では運転資本と固定資産の効率化として位置付けられる。とりわけ在庫、店舗資産、債権などを含む資産全体の適正管理を最重要課題と位置付け、在庫回転率向上を通じてFCF創出力を高める。加えて、有利子負債と連動した適正在庫水準の維持、月商を基準とした在庫管理、保有資産の有効活用や処分、カード債権などの活用も検討課題として掲げている。
キャッシュ・フローは中期経営計画3年間で営業キャッシュ・フロー累計350億円〜400億円を目指す。創出したキャッシュの使い道は、成長投資全体で70〜75%、株主還元で15〜20%と配分する方針である。投資内訳としては、店舗関連180億円、物流関連20億円、事業領域拡張関連60億円を計画している。株主還元については、配当性向40%以上、DOE2.5%以上を目安とし、安定的かつ持続的な配当を実施する。加えて、政策保有株式を純資産の3%未満にまで圧縮することで資本効率を一段と高める。
(7) 所感
「JT-2028 経営計画」は、同社がこれまでの店舗網と顧客基盤を生かしながら、収益力と資本効率を再構築するねらいがある。特に「経営資源の再設計」を前面に掲げ、不採算店舗の整理、人的資本の再配置、PB商品の本格展開、OMO戦略、リフォーム事業の拡張などを組み合わせている。大型家電量販店が画一的な店舗運営から脱し、地域特性に応じた柔軟な価値提供を志向する姿勢は、少子高齢化や生活支援ニーズの多様化に対応するうえで合理性がある。
一方で、実行段階では進捗管理が重要だ。既存店舗の収益格差是正には現場力の底上げが不可欠であり、PB商品展開の成功には開発体制の早期立ち上げと品質確保が前提となる。マーケティング再構築においても、データ利活用と人財育成のスピードが競争優位を左右する。加えて、リフォーム事業ではPMI、店舗・ECとの連携、人財交流をどの程度早期に進められるかが、売上高200億円規模への成長を左右する。計画全体としては財務目標と資本政策の一貫性に着目したい。配当性向とDOEの両方を掲げ、株主還元方針を数値で整理した点は、投資家との対話においても有効である。今後は営業利益率の改善、PB売上構成比、自社EC販売比率、相互利用会員数、リフォーム事業売上高、棚卸資産回転期間、政策保有株式の圧縮状況を継続的に確認する必要がある。
「JT-2028 経営計画」は、同社が「家電量販店版マチの電器屋」から「ライフスタイル・サポートカンパニー」へ進化するための実行計画であり、収益性の改善が計画どおり進めば家電量販業界のなかで地域密着型モデルの独自性を高める可能性がある。2027年3月期から2028年3月期の変革フェーズで収益基盤を固め、2029年3月期以降の飛躍フェーズにつなげられるかが、企業価値向上に向けた焦点となる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林 拓馬)
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