*11:44JST 椿本興 Research Memo(4):設備装置事業は反動減も、動伝事業は増収に転じ、産業資材事業は2ケタ成長
■椿本興業<8052>の今後の見通し
2. 事業別見通し
(1) 動伝事業
動伝事業の売上高は前期比2.1%増の58,000百万円を見込む。半導体関連需要の回復が見込まれているほか、自動車メーカー向け保守部品(チェーンや減速機など)の底堅い需要も売上を下支えし、増収に転じる見通しである。半導体市場の回復局面を取り込むことで、主力事業として安定成長を目指す。
(2) 設備装置事業
設備装置事業の売上高は前期比2.5%減の62,000百万円を見込む。前期に計上した中国向け大型案件の反動減を織り込んでいることから減収予想である。ただし、二次電池生産設備やECフルフィルメント自動化、フードテック関連などの成長領域への取り組みを強化しているほか、長いリードタイムを持つ事業特性から期首時点での豊富な受注残高が今期の売上を支える見通しである。
(3) 産業資材事業
産業資材事業の売上高は前期比13.1%増の12,000百万円を計画している。一般消費財向け需要の回復に加え、原料や素材を加工して顧客ニーズに対応する開発戦略を推進することで、高付加価値製品の拡販を進める。顧客ごとの用途に応じた提案力を強化し、2ケタ成長につなげる方針である。
■中長期の成長戦略
新中期経営計画では、2029年3月期に売上高1,500億円、営業利益75億円を目指す
1. 中期経営計画
(1) 基本方針と全体像
同社2027年3月期から2029年3月期までの3ヶ年を対象とする新中期経営計画「ATOM2028」を公表した。スローガンには「Advanced Technology for Optimum Machinery(最先端の技術で最適な機械をお客様に提供します)」を掲げている。
同社は中長期の成長シナリオを3段階で描いている。ROE向上と配当性向の改善を重視し、経営基盤の強化に取り組んだ前中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期)を土台として、2027年3月期からの新中期経営計画では「強靭な収益基盤の構築と財務戦略の高度化」を推進する。その先の2030年3月期以降で「企業価値向上・ステークホルダーとの協創」の実現を目指す。最終的なビジョンとして「機械と技術の総合商社として、産業界の未来価値創造企業を目指す」ことを掲げている。
新中期経営計画の基本戦略は、「事業領域の価値向上」「資本構成の最適化と株主還元の強化」「ESG経営の深化」の3つである。中核となるのは「エンジニアリング×ソリューション」のさらなる追求であり、収益基盤の拡大と成長領域への重点配分を進めるとともに、資本効率の向上や人的資本への投資を強化する方針である。
(2) 定量目標
新中期経営計画では、最終年度となる2029年3月期に売上高1,500億円、営業利益75億円、経常利益80億円、ROE12%以上、営業利益率5%以上を目標とする。収益基盤を量・質の両面から強化する計画であり、とりわけ営業利益率5%以上の達成が重要なテーマとなる。この実現に向けて、高採算案件の選別受注を徹底するほか、メーカーやSIerとのアライアンスを通じて、これまで外部に委ねていた工程を取り込み、付加価値の向上を図る。また、現金回収までの期間を示すCCCは約20日を維持し、高い資金効率を確保する方針である。
2. 成長戦略
同社の競争優位性の源泉であり、目標達成のカギとなる成長戦略のキーワードが、「エンジニアリング×ソリューション」の追求である。これは、技術的な知見を持つ「提案人材」が、ライフサイクル全体を見据えて最適コーディネートを実施する「ワンストップ体制」とトップメーカーとの強固な「取引基盤」を活用し、顧客の潜在課題を具体化して解決策を提供するビジネスモデルである。これら3つを組み合わせることで、単なる商社機能を超えた課題解決型の価値提供を実現し、産業・社会に不可欠な存在として持続的な成長を目指す。
具体的には、現在の収益基盤である「けん引領域」で安定的な成長を確保しながら、メガトレンドを捉えた「発展領域」に経営資源を重点配分することで、さらなる売上拡大を図る方針である。
自動車分野では、内燃機関や組立・塗装ラインなどの既存モビリティ生産ライン周辺をけん引領域と位置付ける。一方、BEV・HEV向け車載部品や、需要拡大が続く二次電池(バッテリー)向け生産設備を発展領域として強化する。特に二次電池分野については、市場規模の大きさから高い売上寄与が期待されている。
半導体分野では、洗浄や成膜など前工程製造装置周辺をけん引領域として安定収益を確保する一方、高精度かつ高稼働率が求められる先端・後工程周辺領域を発展領域と位置付ける。
物流分野では、工場内のマテハン基盤(搬送・保管)をけん引領域とし、人手不足への対応需要を背景に、AIロボットや自律型搬送ロボットを活用したECフルフィルメントの自動化領域を拡大する。
食品分野では、冷凍・包装ラインなどの安定生産設備をけん引領域とし、外食・中食業界における工程自動化を支援するフードテック分野を発展領域として展開する。
環境分野では、バイオマス設備やリサイクル設備の更新需要をけん引領域とする一方、ペロブスカイト太陽電池関連や水素エネルギーなど、脱炭素・資源循環ソリューションを発展領域として育成し、新たな市場の獲得を目指す。
(3) 財務・資本戦略
経営基盤の強化に向けては、財務戦略の高度化と人的資本への投資を加速する方針である。財務面では、ROE12%以上の達成に向けて政策保有株式の計画的な縮減を進めるとともに、創出したキャッシュを成長投資と株主還元へ最適配分する。また、M&Aや事業提携などのインオーガニック投資も視野に入れており、自社単独では獲得が難しいソフトウェア分野や半導体部品分野のノウハウを持つメーカー、国内商社、海外の技術系企業などを対象に、顧客基盤の拡大や事業領域の強化を検討している。
ESG経営の深化に向けては、新たな指標として設定した「付加価値創造性」を2026年3月期比で5%向上させるほか、脱炭素貢献商品の売上高を2031年3月期までに2024年3月期比で2倍に拡大する目標を掲げている。
経営陣は、足元の受注が堅調に推移していることを背景に、「エンジニアリング×ソリューション」を軸とした成長戦略の実現に強い手応えを示している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉 俊輔)
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