*11:06JST サイバートラスト Research Memo(6):社会の変化に合わせた基盤要素の提供を続け、着実な利益成長を図る
■成長戦略
サイバートラスト<4498>はデジタルトラスト事業における成長領域の収益拡大、特にリカーリングサービス売上高の成長加速により、持続的な成長を実現する戦略を掲げている。事業環境としてDXの進展やマイナンバーカードの利用拡大が進む一方で、国際的な安全基準や法規制の強化を背景に、社会全体でセキュリティ強靭化へのニーズが高まっている。こうした変化に合わせ、デジタル社会に必須の基盤要素を提供することで、着実な利益成長を図る方針である。
具体的にはサーバー証明書やデバイスID、Linuxサポート等を安定高収益源として、電子取引の信頼性を担保するiTrustや、重要インフラ15分野において国際安全基準に適合した長期安定運用が可能なサーバー向けOSのAlmaLinux及びエッジ(IoT・組込機器)向けOSのEMLinuxなどを中心に、高成長をけん引する成長領域のさらなる収益拡大を推進する。売上拡大に向けた施策として、大手SIer・SaaS事業者を中心とするVARパートナーに加え、地方を拠点として展開するSIerとの連携・協業により全国のパートナーネットワークを拡大するほか、新製品・サービスの開発も積極的に継続する。また新たな成長領域として、M&Aも活用した新規事業創出やグローバル展開への成長投資により、さらなる成長を目指す。
特にiTrust関連では国策と連動した需要拡大が見込まれている。2027年4月の犯罪収益移転防止法改正により、オンライン・対面ともに本人確認手続きがマイナンバーカードによる公的個人認証に原則として一本化される見通しである。同社のiTrustはオンラインから対面窓口まで網羅するマルチチャネル対応を強みとしている。金融業界の前倒し対応需要を確実に取り込むことで、市場における確固たる優位性を築きながら収益拡大を図る。また2026年3月の総務大臣認定制度の申請開始を機に、企業や組織が発行する各種取引書類などの文書やデータの信頼性を高めるeシールの需要が高まっており、主要なパートナーとの協業を本格的に展開し、iTrustの新サービスとしてさらなる収益拡大を目指す。
さらに同社は、日本成長戦略17分野のうちAI・半導体分野、デジタル・サイバーセキュリティ分野、量子分野を戦略的成長領域と位置付け、この3分野で事業成長投資を積極的に行い、次世代社会インフラの信頼を支えるデジタルトラスト事業を確立する方針を掲げている。量子分野に関しては2023年1月に、証明書の高速・大量発行が可能な同社の新認証局基盤において、米国国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology。以下、NIST)が選定したPQCへの対応に関わる概念実証を完了した。NISTは量子コンピュータでも容易に解読できない新しい暗号技術であるPQCの標準化を進めており、同社は既存暗号からPQCへの移行を進める企業や組織の移行検証を支援する。また、量子コンピューティング技術の先端企業であるQuantinuum K.K.(本社:英国、米国)(以下、クオンティニュアム)と協業し、クオンティニュアムが提供する量子コンピュータを利用した暗号鍵生成プラットフォーム「Quantinuum Origin」を、同社が提供する電子証明書の高速・大量発行が可能な新認証基盤と連携させた実証が完了した。IoT機器の利用拡大にあたってはデータへの高速なアクセスと堅牢なセキュリティ対策が必要となるが、クオンティニュアムとの協業も活用して量子コンピュータ・IoT時代の安心・安全な社会の実現を推進する。また2025年3月には弁護士ドットコム<6027>とPQCを活用した電子契約の技術検証を開始した。
同社はトラストサービスとプラットフォームサービスの両分野において、ストック収益型のリカーリングサービスが拡大基調であり、リカーリングサービス売上高比率が6~7割(トラストサービスは約8割、プラットフォームサービスは約5割)を占めるという高収益基盤を確立している。この点を弊社では高く評価している。良好な事業環境を背景に、同社が注力する各リカーリングサービスの成長が中長期的な企業価値の向上に直結するものとして、今後の動向に注目したい。
■株主還元策及びサステナビリティ経営
安定的かつ継続的な配当が基本方針
1. 株主還元策
株主還元策については、中長期的な企業価値向上に向けた成長投資を積極的に行いつつ、安定的な配当を継続していくことを基本方針としている。中長期的視点で事業拡大を図る同社の方針に対し、株主からの理解を得るため、期末配当として年1回の剰余金の配当を実施する方針である。この方針に基づき、2026年3月期の配当は2025年10月1日付の株式2分割換算後で前期比0.5円の増配となる年間12.0円(期末一括)を実施した。これにより、配当性向は19.6%となる。また2027年3月期の配当予想は前期比2.0円増配の年間14.0円(期末一括)を予定している。この場合の予想配当性向は18.3%となる見込みだ。今後も継続的な利益成長に伴い、さらなる株主還元策の強化が期待される。
2. サステナビリティ経営
同社はサステナビリティ経営を重要な戦略と位置付け、積極的に取り組む方針を掲げている。事業の成長と持続可能な社会の実現の両立を基本方針に据え、デジタルトラスト事業を通じて安心・安全なデジタル社会の実現や、オープンイノベーションによるテクノロジーの発展、さらにはレジリエントな組織づくりによる企業成長の実現や、省資源・省エネルギー化によるサステナブルな社会への貢献を目指している。たとえば、レジリエントな組織づくりによる企業成長の実現では、管理職に占める女性従業員の割合が2022年3月期に9.1%、2023年3月期に10.5%、2024年3月期に10.3%、2025年3月期に11.3%となり、指標としている情報通信業の平均値(8.2%)を継続して上回る水準を維持している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
<HN>