あらためて実感される村田製作所の技術の強さとは(Getty Images)
中国経済に精通する中国株投資の第一人者・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。今回はAI向けMLCC(積層セラミックチップコンデンサ)技術に関する中国企業の現在地と、そこからあらためてわかる日本企業・村田製作所の強さの秘密を解剖する。
中国電子部品大手がストップ高になった背景
中国本土株式市場では11日、電子部品大手の風華高新科技(000636:深センA株)、機能性フィルム大手の双星彩塑新材料(002585:深センA株)などがストップ高まで買われた。背景にあるのは、村田製作所(6981)の動きだ。同社は10日夜、コンシューマーエレクトロニクス、工業設備、自動車などに使われる9系列の汎用MLCC(積層セラミックチップコンデンサ)について、新規受注を停止すると通知した。競合他社となる風華高新科技において汎用MLCCの受注が増え、双星彩塑新材料においては取引先でMLCC製造時に必要となるフィルム(消耗品)の消費量が増えるとの思惑から株価が急騰した。
村田製作所が汎用MLCCの新規受注を停止する理由は、競争力を失ったため汎用MLCC市場から撤退するのではない。AIサーバー向けの高付加価値製品の需要が急増しており、そちらに生産を集中させるために新規受注を断ったようだ。LLM(大規模言語モデル)の急速な進歩により、AIサーバー需要が急拡大しているが、不足はGPUを中心としたAIチップ、メモリ、さらにはMLCCへと拡散している。
MLCCはセラミック誘電体と内部電極を交互に何百層も積み重ねた構造をしており「電気を一時的に蓄え、必要に応じて放出する」ための部品である。電源回路において電源の脈動を滑らかにしたり、通信回路において不要な高周波ノイズを除去したり、アンプ回路において直流を遮断し、交流信号だけを通したり、時定数回路を作ったり、特定周波数を選んだりと様々な用途で使われる重要な電子部品である。
GPUは、数千個単位の並列演算コアを持ち、瞬間的な電流変動がCPUなどよりはるかに大きいために、より多くのハイエンドMLCCが必要となる。Trend ForceによればAIサーバー1台で最大約2万8000個、サムスン電機によればAIサーバーラック1台当たり最大6万個のハイエンドMLCCが使用されるといったデータもあるようだ。
高容量、低ESR(抵抗)、低ESL(等価直列インダクタンス)が求められるが、現時点ではこうしたAIサーバー向けのハイエンドMLCCを製造できる企業は限られる。業界シェアをみると、トップが村田製作所でサムソン電機、TDK、さらにこれらを太陽誘電が追いかけるといった状況だ。
技術水準では、日韓が飛びぬけており、それを台湾、中国メーカーが追っている。中国メーカーが今後、業績を大きく飛躍させることができるかどうかは、粗利益率が高く、需要も急成長が望めるAIサーバー向け市場に参入できるかどうかにかかっている。
