2000年に営業運転を開始した西武鉄道の20000系。製造から約四半世紀を経て、製造元の鉄道車両メーカーに里帰りすることになった
西武鉄道(以下、西武)は、2026年9月2日に、自社の電車(20000系)を製造元の鉄道車両メーカーに“里帰り”させると発表した。同メーカーでリニューアルを実施した電車は、2028年より順次運行する予定だ。
一般的に大手鉄道会社では、車両の延命を主目的としたリニューアルを自社で行うことが多い。しかし西武は、その作業を日立製作所(以下、日立)にアウトソーシング(外部委託)する選択をした。西武本社がある所沢から、作業を行う日立の笠戸事業所までは、直線距離で700km以上あり、輸送にコストがかかるのに、だ。
なぜ西武は、このような選択をしたのか。関連する講演や取材会に参加した交通技術解説者・川辺謙一氏がレポートする。
アウトソーシングを選んだ背景
結論から言うと、西武が製造元の日立にリニューアル作業のアウトソーシングを選んだのは、工期の短縮と、さらなる品質向上を両立するためだ。価値向上の代表例には、インテリア・エクステリアのデザイン一新だけでなく、日立が開発したデジタルソリューション群「HMAX(エイチマックス)」を導入し、オペレーションとメンテナンスの効率化を図ることが挙げられる。
リニューアル後の20000系のインテリアイメージ。現在とはデザインが異なる(画像:日立製作所提供)
なぜ西武がそのようなことをしたのか。背景には、近年同社が抱えていた3つの課題がある。1つ目はコロナ禍を機に鉄道利用者数が減ったこと。2つ目は、鉄道の脱炭素化に必要とされる電車のVVVF化(VVVFインバータ制御の導入)による省電力化を2030年までに達成する目標があること。3つ目は、今後人手不足が見込まれることだ。
もしVVVF化した新造電車を大量に投入し、オペレーションやメンテナンスを容易にできれば、2つ目と3つ目の課題が解決する。ただし、それには多額のコストがかかる。鉄道利用者数が減った今、その投資をするには限界がある。
そこで西武は、まず他社の中古電車を導入し、VVVF化した電車の比率を上げた。小田急電鉄や東急電鉄から中古電車を譲受し、ほぼ自社内で改造して営業路線に投入したのだ。同社はこのような電車を「サステナ車両」と呼んでいる。
いっぽう冒頭で紹介した20000系は、製造時からVVVF化を実現していた。しかし、それから約四半世紀が経過し、リニューアルが必要になったものの、車両数が計144両と多く、西武社内の施工場所や人員に限りがあった。そこで西武は、20000系を製造元である日立の笠戸事業所に里帰りさせ、短期間でリニューアルを実現することにしたのだ。

