田代尚機のチャイナ・リサーチ

韓国ロッテが中国で壊滅的打撃、岐路に立つ韓国企業の中国ビジネス

中国人観光客向けの免税店事業も大打撃(ソウル・東大門)

中国人観光客向けの免税店事業も大打撃(ソウル・東大門)

 韓国ロッテグループの中国ビジネスが壊滅的な被害を受けている。複数のメディアによると、2017年8月末現在、中国本土に112店舗あるロッテマートの内、87店舗が消防当局より営業停止処分を受けており、13店舗が自主的に営業を停止、12店舗が営業を行っているが、売上高は75%減少しているなどと伝えている。14日の聯合ニュースでは、ロッテマートは業績悪化に耐えられず、店舗売却の準備に入ったと伝えている。

 極端な営業不振となった要因は、韓国政府がTHAAD(Terminal High Altitude Area Defense、高高度ミサイル防衛システム)ミサイルの配置を決定したことにある。

 韓国政府は2016年9月30日、慶尚北道星州郡にあったゴルフ場「ロッテスカイヒル星州カントリークラブ」をTHAAD配備用地と決め、所有者のロッテ商事には代わりに京畿道南楊州市にある軍用地を提供すると発表した。

 2016年末時点でロッテマートは本土に115店舗のスーパーを展開していた。2007年から本格的に本土小売事業に進出したロッテグループだが、中クラスよりも少し上の商品を値ごろな価格で提供することで、着実に中国消費市場に浸透していった。

 ところが、2016年12月、すべての営業店において税務調査、消防、衛生、安全検査などの大規模調査が入ることになった。2017年2月28日、ロッテ商事が用地の交換に応じる契約を結んでからは、消費者の不買運動が高まり、営業停止を免れた店舗についても大幅な赤字を余儀なくされている。ロッテグループは3月24日、増資や貸出の形で3600億ウォン(約350億円)の資金投入を行ったものの資金は枯渇、8月31日に3億ドル(約330億円)の追加資金投入を行っている。

 ロッテグループの不振は本土ビジネスだけに限らない。8月22日の韓国マスコミ報道によれば、ロッテホテルは中国人観光客の激減によって、上半期の業績は過去最大となる900億ウォン(約88億円)の営業赤字を計上した。業界トップの免税店事業も同じ理由で第2四半期は14年ぶりの赤字となったようである。

 こうした厳しい状況の中でも、ロッテグループは決して中国ビジネスを放棄したりはしないと宣言している。

 韓国最大の貿易相手国は中国であり、中国のWTO加盟が実質的に決まった1999年あたりから、多くの韓国企業が中国ビジネスに傾倒した事業戦略を採っている。人口が相対的に少ない韓国にとって、中国市場は経済を成長させるために最も重要な市場となっている。

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