中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

「ブラック労働」の経験は仕事人としての成長をもたらすか

中川氏が「ブラック労働時代だった」と振り返る当時の仕事部屋

「ブラック企業」「ブラック労働」「ブラックバイト」……など、過酷な労働なのに報酬が安い状況を指す言葉がメディアで頻繁に使われるようになっている。そんな中、「ブラックフリーランス」もあると述べるのはフリーライター・編集者の中川淳一郎氏だ。とはいえ同氏は、「短期間であれば、それを受け入れてもよいのではないか」と考えているという。なぜそう考えるに至ったのか、中川氏が解説する。

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 不思議なもので、フリーランスが「労働時間が長過ぎる……」と言ったら「お前が自分で選んだ道だろ」や「自分でそれだけ仕事取ってきてるんだから自己責任だ」と言われてしまう。まぁ、そうなんですけどね。それを言ったら会社だってバイト先だって自分で選んでいるわけですから同じことだと思いますが……。

 まぁ、フリーランスはやはり上司がいるわけではないので、「押し付けられた感」は少ないでしょうし、自己責任の範疇でその労働時間や報酬の安さについて論じられることが多い。「ブラック労働だ!」と主張したら「お前らは甘っちょろい」と怒られてしまいますね。実際問題としてフリーランスが「もっと待遇を良くしてください!」なんて主張したら、よっぽど“余人をもって代えがたい”人物でない限り、発注相手からは「もっと仕事しやすい人に頼むので、もうあなたはやらなくていいです」と言われておしまいです。

 私は現在、フリーランスになって17年目なのですが、現在の労働時間は大体1日7~10時間です。書籍の執筆や7000字程度の原稿、講演の資料作成などがある時は大幅に増えますが、労働時間は適切だといえましょう。ただし、土日も仕事はあります。

 今は仕事をこなすスピードがかなり速くなってきてはいるのですが、案外フリーランスになった最初の数年間の「ブラックフリーランス」状態が今の糧になっているのかなぁ、とも思えるんですよね。だとすれば、「ひとり企業」みたいな存在でもあるフリーランスはある程度仕事の進め方などを覚える教育的な面においても、短期間のブラック労働状態があってもいいと今となっては思います。

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