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ライフ

ある天下り社長が直面した“誰も幸せにならないハイヤー送迎”

ハイヤーで送迎されるのもラクじゃない?(イメージ)

 会社が業績不振に陥れば、トップが先頭に立ってコストカットに努めるのは当たり前。ところが実際には、ハイヤー送迎ひとつを削減するのもなかなか大変だという。神奈川県に住む70代の男性・Mさんは、“誰も幸せにならないハイヤー送迎”を続けているという。

 Mさんは有名私立大学を卒業後、金融機関に就職し、60代になって系列企業へ天下り。60代にして、まったく門外漢の分野の会社のトップになった。これまでの“組織内の駒”から、小さいながらも“一国の城主”になったMさん。ただ、いざ会社に入ってみると、会社の財務状況は最悪で、いつ潰れてもおかしくないような状況だった。そこで真っ先に思い浮かんだのが、自分にあてがわれているハイヤーの送迎の撤廃だった。Mさんが言う。

「私はこれまで、いちサラリーマンとして働いてきて、もちろん電車通勤してきました。しかし、今の会社に入った瞬間、ハイヤーの送り迎えがあることが分かったのです。朝は自宅の前までハイヤーが到着し、帰りも自宅の前までハイヤーが送るというのです。けれども私の家は、築38年のオンボロマンションで、ハイヤー送迎のイメージに相応しいようなものではありません。ご近所の手前、みっともないので、私はすぐにハイヤー送迎は不要だと言いました」

 通勤ラッシュに揉まれているサラリーマンにしてみれば、ハイヤー送迎など夢のような話だが、会社の経営状況が危ないことにくわえ、道が混むため却って時間がかかることもあり、送迎拒否を申し出たMさん。しかし、ことはそう簡単に運ばなかったという。

「まずは社内の人間から、『社長の安全の確保が……』『対外的な影響が大きい』といったことを言われました。『対外的な』とは、簡単に言えば『“あの会社は危ない”という噂が立つ』ということです。さらに私と同じルートで社長になった前任者からも電話があり、『これはお前が勝ち取った権利ではないのだから、勝手なことをするな』といった主旨のことを言われました」

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