中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

ある中華料理店店主の引退から考える「引き際の美学」

 居心地が良いものですから、一度入ってしまうと客は帰りません。終電が近づいたころに「そろそろお開きにしますかね……」なんてことになって会計を済ませるのでした。そのため、実質的に「1日1組」の店といえましょう。もう行けません。

 同店は夫妻の人柄と抜群の味で人気を博しましたが、大将は元々別の店で働いていたところ、23年前についに独立し、自分の店を持ったのでした。この店が好きな人は、「そろそろ行く?」といった形でフェイスブックのグループメッセージで参加者を募り、何か月かに1回、15人ほどで参加するのです。こうしたグループがいくつかあるのですね。

 毎度同窓会のような空気に浸れる同店は、常連にとっては「麻布十番の実家」みたいな感じですし、夫妻は「親戚のおじさん、おばさん」といった扱いでした。正直、お店が続くならまだまだ通い続けたいと思う常連ばかりでしょうし、お店を閉めるという決断に対して、大将も相当の勇気のいったことだと思います。そんな大将の心意気を尊重したいです。

 さて、皆さんもこうした「行きつけの店」というのはあるのではないでしょうか。しかし、いつまでも続く店ばかりではありませんし、調理人もいつかはプロとしてのキャリアを終えるもの。一連の著名人の引退や、今回の大将の引退のように、惜しまれつつも、しかも潔い様を私もいつかは見習いたいものだと感じ入りました。

「老害」扱いされたり、厄介者としてその立場にしがみつきたくないですからね。

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