中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

文系出身者が「これは役に立った」と感じた大学の講義

文系の大学の講義はどこまで将来の役に立つ?

 大学生にとっては、受講講座の選択に悩んでいる時期だろう。理系であれば、追究したい分野や将来進みたい道の講座を取り、研究や実験を重ねれば良いものの、文系の場合は「果たして将来役立つのだろうか……」と悩むケースもあるのではないか。「文系出身者が役に立ったと思える講義」にはどんなものがあるのか。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が解説する。

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「そもそも文学部の学生は、役に立つかどうかで大学の講義を選んでない」と語ったのは、文学部出身で西洋史学を専攻した40代男性・A氏(現・出版社勤務)です。

「語学などの必修科目以外では、役に立つか立たないかは関係なく、興味のあるものを私は受講していました。たとえば、哲学科の『因果概念の研究』という講義では、原因と結果の関係性や、理由と帰結との違いとか。そもそも因果関係が生まれる背景には何があるのか。誰かがそれを観測しなければ、因果関係自体成立しないのではないか。最終的には“人格”の存在こそが因果概念の鍵を握っている──みたいなことを習いました。

 あ、この段階で今の自分の仕事どころか、普通に生活するうえで、なくてもいい知識ですよね。でも、大学の講義ってそれでいいと思っています。むしろ、文系の人が学問を仕事の役に立てようとし過ぎても仕方がないのではないでしょうか。様々な教養に触れ、多様な考え方を得る、ということでいいのでは」(A氏)

 なるほど、文系の場合は、「この講義は5年後の私の仕事に××の形で〇〇の場面で役立つはずだ!」などと気負わないで良いということだろう。しかし、A氏は『国際関係論』という講義で学んだ「ゲーム理論」は今でも仕事や人生の考え方において役に立っていると語ります。

「ゲーム理論で役に立つのは、条件がいくつかある時に、どういう考えでどちらを選ぶのが良いか、という考え方ですね。天気がどうなるかわからない時に傘を持って行くかどうか、とか、その選択をする時に合理的な理由をつけられるか――。そんなことを考えるようになりました」

 ちなみに、縦軸に雨が降る・降らない、横軸に傘を持つ・持たないを並べたマトリックスで、一番いいのは「雨が降らない&傘を持たない」で、一番よくないのは「雨が降る&傘を持たない」。そうなると、「雨が降る&傘を持つ」と「雨が降らない&傘を持つ」のどちらをよいと思うかによって行動が変わってくるように感じるが、「雨が降る&傘を持たない」という最悪の事態を避けるためには、傘を持って行くことが不可欠となります。これが“最悪回避戦略”という考え方で、A氏はこれを学んで以降、天気がどうなるか分からない時は、極力、傘を持ち歩くようになったといいます。

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